第27話 九月 -
夜になった。
トイレから戻ったら自動的にベッドの上でまた姿勢を崩して、気を散らそうとして、直後に気が散らないように全神経を集中させる。俺は誰かに見られているから、油断したら終わりだと自分に言い聞かせ、ピクピクしながら震え、脚を撫でて、ベランダを見て、カーテンを閉めて、カーテンを開けて、親を呪って自分を呪ってのっぽは何処かと心配してじゃ今度はあの可愛い子もどうなんだろうと心配して自分の心配をして昨日の鳥はなんだと疑問に思って先輩や雨宮はどうなったんだろうと頭を抱えて俺が×をしたからなのかなと後悔してティッシュを怨んでコンドルはなんなんだろうと思った。
コンドルは多分一番上なんだなと思った。
ベランダをまた見たらあいつがいた。
部屋の電気を点けているのに窓の外の全てが影に見える。
屋根の上で音がする。
カシャ。カシャガシャ。タタタタタタタ。
ずっと前から音がしている。
ベランダのあいつが笑った。
この家の屋根なんて薄っぺらい作りだったんだな。
ガタガタガタ。
塵が少しずつ振って来る。その次に拳ぐらいの大きさの木片が落ちてきた。
もう少しで穴が開くところで俺は動けなくなった。瞬きさえできない。
あいつが窓ガラスの向こうで笑っている。腹を抱えてゲラゲラ笑っている。
天上にひびが入った。丁度俺の真上で卵の殻のようにひびが走る。
あいつの笑いは止まらない。
コンドルに引き千切られたところであいつはベランダから飛び降りた。
町の上をぐーるぐーる天高く。
家出として処理された。
「おねがいしまーす」 芳村アンドレイ @yoshimura_andorei
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