最後の言葉が言えない

白銀 蓮(しろがね れん)

最後の言葉が言えない

何度、この背中を見ただろう。

前を歩く彼の背中を眺めながら、後ろをそっとついていく。

隣の友達と笑いながら歩く彼の横顔を眺めるので精いっぱいで、この距離感を私は一生捨てられないのだろう。

「ねえ、そう思うでしょ。」

「え、う、うん。」

急に振り返って私に声をかける彼に、心の声が聞こえてしまったのだろうかと不安になる。

そんなこと、あるわけないのに。

「社会人になっても、こうやって遊びに出かけられるとは思ってなかったわ。」

「そうか?会おうと思えば会えるだろ。」

大学時代と変わらない、そんなやり取りに心がほっとする。

変わったのは、一緒に遊ぶ人数だけ。

「まあ、あんたには会いたくないけどね。」

「は?俺だって会いたくねえわ。」

慣れ親しんだコントに胸が軋む。

本当は知ってるんだ、彼が彼女を募集していることも。

でもきっといつか来るお別れが耐えられない。

「また遊ぼうね。」

そう声をかけて、彼をじっと眺める。

遠ざかっていく友達に、口は小さく動いたが声は出なかった。

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最後の言葉が言えない 白銀 蓮(しろがね れん) @SiRoGaNeReN_

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