第4話 摩耶と亜海。

「さてと。じゃあ、キミの意見を聞こうかな」

「それなら、最後に決めた人と観覧車に乗るのはどうなの?」

「観覧車くらい、一緒に乗ればいいだろ」

 俺はため息交じりに口を開く。

「分かってないね。ここの観覧車は、天辺まできたときにキスをすると未来永劫結ばれるって、噂になっているわ」

「そうなの。だからどっちを選ぶかは、その前にしてほしいの」

 未来永劫……とても重いんだが。

 だが、それだけの覚悟が必要ということか。

 俺は二人を見て、熟考する。

 二人とも素敵な女の子だ。できればどちらも悲しませたくない。だが、確実にタイムリミットは迫ってくる。二人にいつまでも応えを出さないのはダメだ。

 二人の気持ちに応じたい。でも、片方しか選べないのだ。

 それとも、思い切って二人ともふるか……と、そんなことをすれば二人とも悲しんでしまう。どうすればいいのやら。

 困った顔で肩をすくめる。

 そんな顔を見たのか、二人は何やら話し合いをしている。

「そろそろお昼にしようなの」

「そうね。お腹がすいていたら、考えるのも一苦労よ。空腹は大敵なんだから」

 亜海と摩耶がビシッと人差し指を向けて、どや顔をしてくる。

「ああ。分かった。そうしよう」

 俺も小腹がすいていたところだ。悪い提案じゃない。

 近くのフードコーナーに立ち寄ると、ラーメンを注文する。亜海はスパゲティ、摩耶はカツ丼を注文する。


 摩耶はカツ丼をぺろりと食べ終えてしまう。そして口を開く。

「いっぱい食べる女の子は嫌いかしら?」

「いや、むしろ逆だ」

「む。ということはわたしは嫌いなの?」

「そういうわけじゃないが」

 未だにスパゲティに苦戦している亜海。小食なのかな。

 食べる量は違うのに、二人とも同じ体型とは。胸が薄いが、そこに栄養はいってないのか。

 と失礼なことを考えてしまう。

 頭を振り、俺は二人を見やる。

 パフェを追加注文する摩耶と、やっとこさスパゲティを食べ終える亜海。

 どちらも魅力的だが、どうして決めなくちゃいけないのか。


 そのあともゴーカートやメリーゴーランドに乗った。

 そして夕方になり、とうとう遊園地も終わりの頃。どちらかを選ぶ最後の時。

 俺はどっちと結ばれるべきなのか。

「俺が選ぶのは、摩耶。キミだ」

 ぶわっと涙を浮かべる摩耶。

 そっか、と残念そうに呟く亜海。

 俺は摩耶と一緒に観覧車に乗る。

 それを見上げる亜海は薄らと涙を浮かべる。

「ギャンギャン泣いてしまう女の子は嫌いかな?」

 亜海はそう言い、涙を堪える。


「わぁ。ここからだと街が一望できるね!」

「ああ。そうだな。……綺麗だ」

 街並みに灯りがぽつぽつと浮かぶ。夕日に染まった空にだんだんと近づいてくる。

 その頂上で摩耶はそっと顔を近づけてくる。

 このあとの展開は決まっている。

 こんなに好かれて、俺はなんて幸せなんだろう。

 俺はこの子を一生大事にしようと心に誓うのだった。


 夕日の中、俺と摩耶はキスをした。



                        ~終わり~

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双子の想いは俺には重いんだ。 夕日ゆうや @PT03wing

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