普段、百合というものをあまり読まず、殺伐百合というものもごく最近知りましたが、少女という存在をここまで優しく神聖的に描かれる書き手さまを、私は他に知りません。
こんなに無垢な敬愛を抱ける少女は創作界隈でもそうそう見られるものではないと思います。
少女に対するイメージががらりと変わります。
今作は殺伐百合ということでその愛がひとかたならぬ屈曲を見せ、思わぬ悲劇を招きます。
思えば私も幼い頃は小さな子供社会の中で抑えがたい独占欲を抱え、友達の何気ない一言や仕草に一喜一憂し、日々変わる人間関係にはらはらしたように思います。
命を奪うことはなくても、心を傷つけ合うことが少なくなかったようにも思います。
ヴィサラの抱いた独占欲とマグダに対する愛は誰の心にも眠っているものであり、この物語も読者の皆様の心に深く入り込んでくるものだと思います。
私の拙い読解力ではとてもこの作品の魅力を語り切ることはできません。
悲しくも美しい殺伐百合の世界を、どうぞ皆様もご堪能ください。