第6話友は偉大なり
「待たせたな!」
海の上から流氷に乗って誰かがやって来たのです。
「食らえ!」
小さなその影は口から吹雪を、もう一つの似たシルエットの影は口から炎を吐き出しました。
「ぐっ…」
突然現れた援軍にキングデーモンは気づけず、攻撃をその身に受けました。
王たちの元へと滑り寄った二つの影は、互いに手を取り合い、そして高く掲げました。
「俺たちは一人じゃない!」
「今こそ、共に戦おう!」
小さな影の一つはキングペンギン。ペンギンの王でした。そして、もう一つは皇帝ペンギン。王と皇帝は互いに争っていたはずでした。理由はどちらが上か。
そんな二匹は、キングデーモンに勝つためとうとう手を組んだのです。手を…
組んだのです?
その時、森の方からも声が聞こえました。
「ワタクシたちもいましてよ!」
高い女性の声。王たちが目を向けるとそこには
何もいませんでした。いないように見えました。しかし、よーくよーく目を凝らすと
まだ見えません。
「…誰かいる?」
「いない」
「気のせい」
「幻聴?」
「このお馬鹿さんたちが!」
王たちは互いにボソボソと言い合いますが、誰の目にも小さすぎて写りません。
なんとそこには軍隊という群れを率いた女王蜂と女王蟻がいたのです。女は弱い? 虫は弱い? 小さいは儚い? そんなことはありません。
時に女性は強く、時に虫は己より何千倍も大きい生き物を殺すのです。カマキリのメスはオスを食べます。
本当に怒らしてはいけない存在はお母さん。
そんな女王さえ力を合わせようというのです。
キングサーモンは目を輝かせて言いました。
「勝てる…勝てるぞ!」
これからが俺たちの本当の戦いだ!
「どれだけ数を揃えようと、我に敵う者なぞおらん」
「今度こそお前を倒してみせる…
父さん!」
キングサーモンの親はキングデーモン…イクラと鮭の関係ではありません。転生前では血が繋がった親子として生を受けたキングサーモンは、あまりにサタンがあまりに愚かであったため寝返っていたのです。
激弱悪魔として一生を終え、転生したキングサーモン。前世も、今世も素晴らしい同志と巡り逢えたキングサーモン。
この転生者の集う魔界で、今度こそ覇者となれるのか?!
じゅるり
すぐそばで涎を垂らす仲間がいるぞ!?
そして、古の谷からは古代の暴君竜がその眠りから解き放たれようとしていた。
ぐるルルルル…
『我こそが魔界の覇者なり』
激突!鮭の反乱 犬屋小烏本部 @inuya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます