最終話 『聖女』の結婚

 結婚式。誰しも一度は憧れやそれに類する感情を抱くだろうそれ。

 白無垢や純白のウエディングドレスに身を包み、神の前で夫婦の誓いを立てるそれ。

 お姫様のように豪奢に着飾って、王子様と結ばれたい。そういう願望を抱く女子も少なからずいるはずだ。

 ──私の中では今、それを、その幻想が、粉々に打ち砕かれたところだ。


「私、櫛名田杏は、ベリス・ブラッドストーンを妻とし、一生幸せにすることを誓います!」


 王国の首都。その教会で密かに行われた『結婚式』。

 私、ベリス・ブラッドストーンは『妻』として『聖女』──櫛名田杏と共に夫婦の契りを交わしたところだ。

 無論これは宗教的によくない。故に『儀式』ということで教会を貸し切り、王族内で密かに行われたのだ。

 ちなみに私も杏もウエディングドレスに身を包んでいるが、夫には杏がなるらしい。ちょっとどういうことだかわからない。


『本当は一番にベリスさんを妻にしたかったのに……』


 そう言った時の杏の悔しげな表情は印象深いものだった。それくらい私という存在を好いていたことに、どこか嬉しさも感じるくらいだ。

 とはいえ私の夫は第二王子。そも表向きも私が結婚したのは第二王子となっているし、アンティとの関係も実際に良好であるから、ほぼ私と杏は契りを交わしたとしても、事実婚のようなモノになる。けれど横でそう誓う杏の表情はとても生き生きとしているものだから、私は思うのだ。





 ──本当、どうしてこうなった。

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貴族令嬢は絆されない! 束白心吏 @ShiYu050766

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