優しい嘘

ユキ

真実

好きな人からの連絡が途絶えた。

何か気に触ることをしてしまったのだろうか、突然だった。

3年前くらいにも1度だけこんなことがあったから、その時みたいに数日したら戻ってくるだろうと思っていた。

しかし、1ヶ月経つが連絡は一向に来ない。

どうしたのか気になり、私は友人に尋ねることにした。

「悠介君なら亡くなったよ、3年前の今日。何か病気だったみたいだよ。」

友人の言葉が耳に入ってこない。

ナクナッタ?そんなはずはない、つい数日前まで連絡が来ていたのだから。


私は好きな人もとい、悠介の家を訪ねてみることにした。

悠介の家に着いた。呼び鈴を押すのが怖い。

嘘であってほしい。何事もなかったかのように笑ってほしい。そう思いながら震える手で呼び鈴を押した。

出てきたのは悠介のお母さんだった。少しやつれて見えるのは気のせいだろうか。「いらっしゃい。」出迎えられてそのまま家へと上がる。

悠介の家へは何回も来たことがあった。最後に来たときと変わっていなかった。悠介がいないこと以外は。

悠介は写真の中で笑っていた。私が大好きだった笑顔で。

私はふいにあること気がついて、悠介のお母さんに尋ねた。

「あの、悠介の携帯を見せてもらってもいいですか?」

そう言って借りたけれど、私は悠介の携帯のパスワードを知らなかった。最初、悠介の誕生日を入れてみたけど開かなかった。次に、1122と入れてみる。開いた。嬉しかった。

安直な数字だが、実は私の誕生日だった。

ホーム画面が涙で歪んで見にくくなった。

悠介とその隣で笑顔の私が写っていた。

「彼女じゃないのにホーム画面にしたらダメじゃん。」

私は悠介の携帯のLINEを開いた。気がつくと3年前から最近までのやり取りが消えていた。

「悠介の幽霊でも出たのかな…」

そう言って涙を拭う私に悠介のお母さんが言った。

「最期のメール見た?メール、送ろうかどうか迷ってたから下書きとか残されてるかもしれないわ。」

早速メールを開いてみると案の定下書きが残されていた。

『このメールを見てるってことは俺は目の前にいないんだろうな(笑)。病気のことは黙っててごめんな、黙って立ち去るのがかっこいいと思ってさ。

俺のことは忘れてくれ、もういないんだから。とかかっこいいこと言えたらいいんだけど、本当のこと言うと雪のことがずっと好きだった。病気になってから、いつか来る別れが怖くて言えなかった…。

俺は隣にはいられないし、笑顔にしてやることもできないけどいつも雪が笑顔だったらいいな。雪の笑顔が好きな悠介より』

読み終わった途端、私の涙腺が決壊した。

いや、崩壊したというほうが正しいだろう。

泣いても泣いても、次々に涙とともに思い出が溢れる。悲しいなんて言葉じゃ言い表せないくらい。

雪。悠介は私をそう呼んでいた。

男みたいな自分の名前が嫌いで、悠介が考えてくれた愛称。

いつまで経っても涙は止まることがない。でも、悠介は私の笑顔を好きだと言ってくれた。

いつか心から笑顔になれる日が来るといいな。

そうして私は、快晴な空に向かって微笑んだ。

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優しい嘘 ユキ @miisa

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