第96話 They are alive
春奈のお屋敷、葬式の準備が整い、棺桶に釘を打っている夏男。
コン…コン…コン…ズムッ
「AuoaOー‼」
仲良く喧嘩する大型の猫のような声で叫ぶ夏男、トンカチで人差し指を引っぱたいたのだ。
「そういえば、あの猫も大概、不死身だな、細切れになっても数秒で元に戻るんだから、普通に2足歩行で走るし、ピアノはコンサート開く級の腕前だしな」
「それでネズミに負けるんだから大概ですよね」
後ろで見ていた小太郎が珍しく話かけてきた。
「ん? 暇そうだな小太郎」
「まぁ…向こうの準備は終わりましたから、棺桶運ぼうかと思いまして」
「そうか…じゃあ、ソッチ持てよ」
「はい」
「夏男さん聞いていいですか?」
「なんだ?」
「今日もブラジャー着けてるんですか?」
全員、一応喪服である。
さすがに今日はふざけないだろうと思っていた。
「気になる?」
うわぁ…腹立つ顔して聞いてくるな~。
「気になるわけではないのですが…」
「じゃあなんで聞くの? 気になるから聞くんだろ?」
「……」
「フッ…今日は白だ…葬式だからな」
その意味は解りませんでしたが、夏男さんなりに正装してきたという意味で受け取ることにしました。
当然、誰もお経を読めるはずもなく、いや冬華が挑戦すると最後まで意欲的でしたが、やらせなくて良かったと思います、きっと面白いことになったと思うから。
棺桶を囲んで、春奈の爺やの思い出を聞き、爺やを探すような婆やを落ち着かせ、そんなこんなで時間が過ぎていきました。
ガタガタガタ…ゴトッ…ガタガタ…
「棺桶揺れているです」
冬華がアジの開きを、かじりながら棺桶を指さす。
「その干物どこにあったの?四宝堂」
「婆やから貰ったです」
「爺や棺桶の中では暴れないでほしいのですわ、せめて葬式が終わるまで大人しくなさいませ」
棺桶から這い出るゾンビ爺やを慌てて押し込もうとする春奈。
「結局ゾンビになるんだな…」
秋季が扇子を広げて苦笑する。
「そのようですね」
「小太郎よ、もし私が死んだら皆の傍に置いてやってくれないか?」
「嫌でも寄ってくるでしょう」
「ハハハ、そうかもしれんな」
「俺も傍で生きてくぜゾンビとしてな」
「………」
誰も笑わなかった、誰も答えなかった。
「俺、泣いていい?」
(僕らは生きていく…楽しくて、悲しくて、賑やかで、寂しい、そんな世界で)
「僕らは皆生きている…」
Fin
ゾンビが徘徊する世界で、こんな能力を持ってみたって、どうしようもねぇ… 桜雪 @sakurayuki
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