害獣駆除

ぱっつんぱつお

それは響き渡る放送から始まる


『────本日、午前、九時から、午後、一時まで、害獣の、追い立て、及び、捕獲、及び、駆除を、行います──』



「ったく、こういう時だけ隠れやがって」

「居ませんねぇ……」


 時間になり、動き出した男ふたり。


「あ、足跡ありましたよ。新しいの」

「つーこたぁ、どっか近くに居るなぁ」


 リーダーと見られる男は辺りを見回し、目を凝らした。

 しかし、逃げるのが上手い奴らはその姿さえ見せない。

 リーダーの男は、変わり果てた山を見て、溜息をついた。


「全く、こんなに土をほじくり返して……、」

「本当ですね。荒らしては食べ物も全部駄目にしちゃうし……、それに爆発的に増えてるらしいじゃないですか」

「あぁ、嘆かわしいよ。定期的に間引いても、どんどん増え続ける……。困った害獣だな」


 もっと奥に進んでみようと男ふたりは脚を踏み出した。この先には罠と毒団子を設置してある。

 自分たちは罠から確認だ。

 毒団子が仕掛けてある方は別のふたりが向かっている。その内のひとりが毒入の団子を作ったのだ。

 なんでも大切に育て、熟すのを待っていた柿の木を、根ごと駄目にされたから「吊るして見せしめにしてやる!」と怒っていたそうだ。


 ふたりが罠が仕掛けてある場所まで静かに歩いていると、「あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"──……!」と雄叫びが聞こえてきた。

 別のグループが仕留めたらしい。

 だがこのペースでは、一向に数は減らない。

 間引いても、間引いても、増え続ける。

 リーダーの男はまた「はぁ」と、溜息をついた。


「あ! 見て下さい……! 罠に掛かってますよ……!!」

「本当か?」


 ぱたぱたと走り出す部下の後を追う。

 其処には、罠にかかった拍子に片脚が折れ、動けなくなった害獣が居た。


「見てくださいよリーダー。こいつ今から死ぬかもしんないってのにSNSやってますよ」

「はっ……! 本当、愚かな獣だな」

「あ"ぁあ"…! う"あぁあ"……!!」

「何か言ってますね」

「知るか。早く止め刺せ。臭みが残るぞ」

「はーい」

──「おーーーーーい、猪さーーーん………!」


 部下が慣れた手付きで獣を止め刺しているのを眺めていれば、毒団子を設置した猿が、嬉しそうに此方に近付いてくる。


「どうしたぁ……!!」


 まだ遠い距離に、声を張る。


「見せしめにしてやりましたよぉ……! 馬鹿な子供が毒団子食って、その横で母親も死んでましたよ……! 親子で吊るしてやりました……!」

「ったく、煩いんだよ、他の害獣が逃げんだろ」


 はしゃいでいる猿の横で怒っているのは兄だ。

 柿の木を育てていたのは兄猿で、まだまだ仕留め足りないという様子。


「お。猪さんの方も引っ掛かりましたか」

「ええ! 見て下さいよ! 僕ったら解体するのも慣れました!」

「くっちゃべってると失敗するぞ」

「はーい」


 恐怖に染まる獣の瞳。

 兄猿はそれを見ていると、沸々と怒りが沸いてきた。


「ちっ、ったく。俺の大事な柿の木を引っこ抜きやがって。見てみろよ猪さん。この辺りぜーーーんぶアスファルトになっちまった」

「あぁ全くだ。この山も随分変わった……。そういやぁ鹿がここへ来る前、害獣を轢き殺したっつってたぞ」

「本当か? 流石、やるな鹿さんは」

「キョンさんも猫さんも、犬さんも俺たちを見習えば良いんだよな! 害獣共の好き勝手にされて!」

「でも別の地域の野犬グループが害獣の一斉駆除をやったらしいじゃないか。なんでも派手に喰いちぎったらしいぞ」

「うっそ! 俺それ見たかった……!」

「犬も可哀想だよな。勝手にあんな害獣の友にされてよ、勝手に増やされ捨てられ殺されてきたんだろ? 俺たち猪はまだ良いぜ」

「それ、狸さんも言ってました」

「解体終わりましたーー!」


 溜まった鬱憤は、部下の言葉を合図に終わり、彼等はまた、街の中心へと脚を踏み出す。


 害獣駆除をする為に──……。

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害獣駆除 ぱっつんぱつお @patsu0

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