16.身に余る役
イルムの膨れあがった頬が漸く引いてきたその日、明日の交流会に向けてクラス内で話し合いが行われていた。
班決めだ。
総勢二十名いるこの一組で五人一組の班で四組作られる。ノルドは完全に生徒に丸投げで見守る様に教室の窓際に座って生徒たちを見ている。
そして生徒たちをまとめているのはやはりカリスマ性を持った王女リレムアナだった。
「––––では五人一組の班を作りたいと思います。基本的に自由なので好き作ってもらって構いません。班が作れたら一つに固まって代表を一人選出してください。では始めてください」
リアナの開始の合図に教室にいた生徒は一斉に動き出す。そしてその集団は大きく分けて三つに分かれた。
一つ目は当然ながらリアナ。主に貴族が男女関係なく集まっていた。
二つ目が意外ながらもユリスだった。こちらは貴族、平民関わらず女子が多い。この数日ユリスに話しかけてその毒舌を喰らった男子は数知れず。
そして三つ目は先日ユリスとイルムにつっかっかてきたアリオスだった。もともと数人の取り巻きがいた彼等だろう。
そんな三つの塊をよそに、ユリスの横に座っていたがいつのまにかその机から追い出されたイルムとナオはそんな光景をただ呆然と見るしかなかった。
「ナオ、ど、どうする?」
「え、っとどうしよう?」
状況がうまく呑み込めていないのか困惑気味に二人して首をかしげた。
しかしイルムは冷や汗ものなのは確かだろう。まさかユリスまでもがここまで人気だったなんて考えていなかった。
ユリスがいないとイルムは交流会には参加できない。こうなると難しいかもしれない、と考えたイルムは隣にいるナオに気まずそうな顔で頼むことにする。
「なぁ、ユリスが別の班になったらナオのパートナーに俺を手か足にひっかけてくれないか頼んでくれないか?」
「う、うん。それは良いけど。……それでいいのイルム君は」
「背に腹は代えられん。竜は基本的にパートナー以外の人間には触れさせてくれないからな。まぁ戦闘時や緊急時は別なんだがな」
ナオの心配はイルムには無用だ。何度アイに運ばれてきたとことか。イルムの首はそこそこ頑丈なのだ。
そうこうしていると何やらイルムたち同様にリアナの集団からはじき出されたミラは疲れたようにため息を吐くと何かを探す様にきょろきょろと周りを見渡した。
そんなおり、ミラはイルムと目が合うと、目を光らせて早歩きで歩いてくる。
「よっ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫? ミラさん」
「う、うん。あのもしよかったら私とリアナちゃんもイルム君とナオ君の班に入れてもらえませんか?」
イルムとナオはそこにリアナの名前もあったことに驚きの表情を見せる。
イルムは気になってリアナの集団に目を向けると、作り笑いをしながら誘いを断るリアナの姿が。しかし、一瞬チラッとイルムを見るとまるで『お願い』というようにウィンクしてきた。イルムはそれに返す様に片手をあげる。
そうこうしていると返事が遅かったからか、どんどん涙目になるミラを見て、イルムは慌てて答える。
「––––っあぁいいぞ。な、ナオ?」
「うん。でもいいのリアナさんは」
「はい。リアナちゃんに頼まれたことなので。学園まで来て接待されるのはごめんだって。それに私も賛成ですから」
そうして四人の班になったことでイルムは思った。ふぅ、王女と同じ班になることには成功した。あとはなる様になれば、とそう考えていたが何か忘れているような気がする。
「あれ? ユ、ユリスさん」
ミラは目を見開いてイルムの隣に目を向ける。イルムも不思議に思ってナオとは反対側を見るとそこにはいつの間にかユリスの姿が。
「あれ、お前いつの間に」
「うるさい。今は疲れてるからそっとしておいて」
ぐで~と机につぶれるように落ちていったユリスにイルムは苦笑いすると、とりあえず集まった二人と向き合う。
「よし、一名不在だが五人そろった。代表を決めようと思うが……めんどくさいからリアナでいいな」
「イルム君、それはさすがに。ここにいない人には……」
「いくらリアナちゃんでも怒っちゃいますよ」
イルムの理不尽な提案に気が引けた二人はひきつった顔をする。
そうは言ってもリアナがいる班で彼女が代表にならないとはならないだろう。しかしどうやら二人はそれには反対らしい。ならばとイルムは次の案を出す。
「ならユリスでいっか。理不尽な命令口調とかもう代表の鑑––––ゴフッ」
「代表はイルムにしましょう」
「「……う、うん」」
隣で沈んだイルムをごみを見る目で見下しながらそう結論づけたユリスは二人の賛成の言葉を聞くと、またしても疲れたように机にうなだれた。
集団の中に一人置いていかれたことを根に持っているのだろう。
しばらくしてようやく解放されたのか、ユリス同様に疲れたようにイルムたちのもとに来たリアナは机に突っ伏した二人をみて不思議そうにミラとナオに話しかけた。
「この二人どうしたの?」
「ど、どっちも時間ができたから寝ちゃったの」
「そうそう、あ、代表だけどイルム君になったんだけど。リアナさんどうする?」
ここでリアナが自分が代表をすると言ってくれればイルムが代表になると言いう馬鹿なことは起こらない。
しかしリアナはそれを聞くと目を丸くし面白そうに首を振った。
「私は止めておくわ。よろしく、リーダー」
「お前、他人の竜の手足にひっかけられるリーダーでもいいのかよ」
いつの間にか起きていたイルムはもう諦めたのか不貞腐れたようにそう言うとリアナは笑顔で頷く。
「面白いじゃない」
ナオが顔を赤くするがイルムは対照的に苦虫をかみつぶすような顔になると大きく机にため息を吐いて再び突っ伏した。
突き刺さるクラスメイトの視線から逃げるように。
あとがき
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