水色の石

雨世界

1 君は優しいね。優しすぎるよ。(たくさん泣いちゃうくらいにさ)

 水色の石


 プロローグ


 私には水色がよく似合う。


 本編


 君は優しいね。本当に優しすぎるよ。(たくさん泣いちゃうくらいにさ)


 その日、時刻はお昼ごろだったと思う。

 私は私以外に誰もいない真っ白な海岸で綺麗な水色の石を見つけた。


 誰かが流したたくさんの涙をぎゅっと(今朝、私がお弁当用のおにぎりでも作るようにして)握りしめて作ったかのような、そんな水色の、……涙の色をしたとても綺麗な、でも、少しだけ、いびつで、へんてこな形をした石だった。

 

 私はしばらくの間、ざーと言う波の音を聞きながら海岸に座り込んで、その水色の石を飽きることなく、ずっと見つめていた。


 それから私はまた真っ白な海岸の上を一人で(白いサンダルを脱いで、それを片手に持ちながら)歩き始めた。


 すると、その次に私は耳に当てて見るとびゅーと言う風の音が聞こえる小さな貝殻を、真っ白な海岸のもう少し先にある場所で見つけた。

 ……中身が空洞で、からっぽになった巻貝の貝殻。

 その耳に当てると、小さな貝殻から聞こえてるびゅーと言う風の音を、真っ白な海岸の波の打ち寄せる間際に立って、私はしばらくの間、じっと耳を澄ませて聞いていた。


 すると、自然と私の目から涙が溢れてきた。


 私は、(その場所には私以外に誰もいなかったから)そのままもう我慢することもなく、海岸に座り込んで一人でわんわんと大声を出して泣き始めた。


 そうやって泣きながら、……私に似合う色はきっと水色なのだろう、とその日、私は本当に強く思った。

 悲しくて悲しくて、涙が全然止まらなかった。(まるで私の目の奥にある涙を止める機能が、いつの間にか壊れてしまったみたいだと思った)


 ざー、と言う波の打ち寄せる音がとても優しかった。


 ……このまま消えてしまいたい、と私は思った。


 ……でも、さっき見つけたあまりにも水色の石が綺麗だったから、……よく思い出してみるとその形は別にへんでもなんでもないって、思うことができたから、私はやっぱり、消えちゃったりしないで、……自分の家に帰ろうと思った。

 ……愛する家族のいる、みんなのいる、あったかい家(私の居場所だ)に帰ろうと思ったのだ。


 たくさんの涙を流したまま、私は今歩いてきた真っ白な海岸の上をまた歩き始めた。そこにはさっき私が歩いてきた足跡が、ちゃんと、しっかりとまだ海岸の砂の上に残っていた。


 私は自分の足跡の上を歩きながら、その帰り道の途中で、真っ白な海岸に落ちていた、さっき見つけた綺麗な水色の石を拾って、その石をじっくりと見つめながら、「……(やっぱり、よく見て見ると、ちょっとだけ)変なの」と泣きながら笑って、私はいった。


 私がこうして自然と笑うことができたのは、もう本当に随分と久しぶりのことだった。(今日、この日に、この海岸に来て本当に良かったと思った)


 私は今日の日の記念に、その水色の石と風の音が聞こえる貝殻を家に持って帰ることにした。


 私は水色の石と風の音が聞こえる貝殻を、まるで宝物でもしまいこむようにして、真っ白なお気に入りのワンピースのポケットの中に無くさないようにしっかりとしまいこんで、それから青色の空を見上げて、去年買った麦わら帽子のつばを少しだけあげて、にっこりと昔の私みたいな無邪気な笑顔で一人、真っ白な海岸に吹いている、優しい風の中で笑った。


 それはあるとても悲しい出来事があった年の夏の、とても暑い八月の日のある一日の出来事だった。

 

 エピローグ


 ……お願い。私にキスして。


 水色の石 終わり

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水色の石 雨世界 @amesekai

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