第18話 馬鹿は誰だ

 珠央が祖父母に絡まれてる中、父がボソッと言った。


「今日な、3月10日でも25日でもないんだよ」


「は? そうだな」


 何の話だ。


「珠央ちゃん、絶対3月25日に結婚したいって言ってたんだ。まあ、その時は挙式じゃなくて入籍の話だったんだけど。でも、いざ式場で日にち決める時になって、やっぱり10日がいいって言い出したんだ」


「……はあ。珠央の誕生日だな」


「でも10日は平日な上に仏滅で、担当の人も安くはなるけどオススメはしませんねーって言っててさ。そしたら珠央ちゃん、やっぱり何日でもいい、私は私だもんねって言い出したんだよ」


「……え?」


「まあ、25日だと母さんの誕生日で母さんとの結婚記念日だから、さらに珠央ちゃんとの結婚記念日って、記念日重なりすぎだよなって思ってたから、日にちが変わるのは全然良かったんだけど」


 ……そうか、珠央……


 勝手に囚われてた母の呪縛から、抜け出したんだな。


 良かったな、珠央。


「珠央ちゃん、マリッジブルーとかかな? なんか精神的に不安定になってるんだろうか?」


「は??」


「それか……いざ結婚式とかの話になって、なんでこんなおっさんと、って、気付いたんじゃ……」


「はっ?!」


「まさか、結婚がゴールで、あとは冷められる一方なんじゃ……」


「ぶわっははは!! かもしれない!」


「え―――?!」


 そんなに好きなのに、ちゃんと普通に好きだと言わなかった罰だ。


 ちょっと悩め!


 どうしたのー? と、珠央やじいちゃんばあちゃんもこちらを気にしている。


 いやいや、なんでもないよ、と親父が取り繕っている。


「聞けばいいじゃん、疑問そのまんま」


「聞けるか! 俺は大人なんだよ! 高校生じゃないんだから」


 こっちは大人の呪縛か。


 店長だったしな。


 馬鹿だな、この2人。


 普通に素直に自分の気持ちを伝え合っていれば、どちらも悩まずに済んだ話じゃん。


 すっかり暗くなってきたのを感知したライトが、一斉に付きだした。


 と同時に、


「お待たせしました! 藤井寺家、小泉家の皆さま、こちらへどうぞ!」


 スタッフさんが呼びに来た。


 ぞろぞろと、ガーデンを後に建物に入って行く。


 ライトの光に紛れて俺も気付かない、ふわっと光る風がわめいていた。


 馬鹿はあんただよ!

 思ったことを何でも垂れ流せないのが、恋心なんだよ!

 人を好きになったことがないから、分かんないだけだよ!

 あんただって、好きになったら全部を素直になんて、言えないんだから!

 それ、全っ然普通じゃないから!

 あんたが全身全霊かけるくらい好きになる人、絶対見つけて、出会わせてやる!!

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聖天坂三丁目NOVA黄金の風 ミケ ユーリ @mike_yu-ri

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