第17話 じいちゃんばあちゃん
天気も良く、ガーデンウエディングには最適な日だ。
ただ、急だったもので遅い開始時間しか空きがなく、披露宴開始から2時間もすると、すっかり薄暗くなってきた。
父のあいさつで、披露宴も終了。
司会の方が締める。
友人、来賓の方々はここで解散。
新郎新婦、近しい親族によるお見送りだ。
俺も、新郎の息子として見送りに参加した。
並んで笑顔で見送る新郎新婦に、それぞれ一言二言声を掛ける。
新郎新婦は、それに応えて、小さな記念お菓子を1人1人に手渡す。
そして、次々と、手を振ったり、おじぎをしたりして、帰って行く。
あー、終わりだなあ。
「おめでとう! また明日ねー!」
「おめでとうございますー」
また明日うちに来る気か。
うるさいのも連れ立って帰って行く。
ごく近い親族のみが残る。
開始時間が遅いことから、披露宴の後に親族紹介という、イレギュラーなスケジュールなのだ。
ガーデンウエディングで比較的カジュアルなのもあって、小さい子供もどうぞどうぞな感じだから、遅くなりすぎないよう、友人や来賓には先に帰っていただくことにしたそう。
うんうん、気遣いのできる良い新郎新婦だ。
控え室の準備が整い次第、スタッフさんが呼びに来てくれるらしい。
しばしご歓談を、ってわけだ。
「疲れたけど、なんか終わったら一瞬だったなあ」
ニコニコと父が近付いてきた。
珠央は見当たらない。
親族紹介の前にトイレにでも行ったかな。
「笈くん! 竜一!」
夫婦で声を掛けてきたのは、母の両親だ。
祖父はスーツ姿、祖母は和服だ。
ちなみに、この2人にはオーラは出ていない。
「でもいいのかしら、親族紹介に私たちが……」
「ぜひ! 遅い時間に申し訳ありませんが」
「そう? じゃあ私が竜一産んだような顔しとくわね!」
「おー竜一、また光が強くなったんじゃないか?」
「暗くなってきたから、目立ちだしたかな」
「ほんと、明里そっくりの色になってきたわねえ!」
母を育てた祖父母はオーラに慣れてるので、また身長が伸びたんじゃないか? くらいのノリである。
「笈くん……本当に、おめでとう。明里の無鉄砲のせいで、長く寂しい思いをさせてしまって、本当に申し訳なかった」
祖父が、父に向かって深々と頭をさげた。
「そんな……そんなことないですよ。竜一がいますから」
「再婚するって聞いて、安心したわ。笈くん、どうか、幸せにね」
祖父も祖母も、静かに涙を流している。
若くして、まだ幼い子供を残して娘が旅立ってしまったことを、祖父母は負い目に感じていたらしい。
じいちゃんばあちゃんだって、娘を失って辛かっただろうに……。
「ありがとうございます!」
父も目に涙を溜めながら、精一杯の笑顔で応える。
「あ、珠央ちゃん! お疲れ様!」
祖母が声を掛ける。
振袖姿の珠央が戻ってきた。
10代で結婚するんだから、と、お色直しで美羅来さんも成人式に着た振袖を着たのだ。
「着物しんどいでしょう」
「トイレが大変ですね」
「まだ準備できないのかしら?」
ほんとだ。遅いな。
「こんな若い嫁さんもらったら、先立たれる心配はないな!」
豪快に祖父が笑う。
いや、あんたらの前で笑いにくいわ。
「油断しちゃダメよ! 珠央ちゃん、暴漢に襲われたら、逃げるのよ! 絶っ対に戦っちゃダメ!」
「はっ、はい! 足遅いけど、全力で逃げます!」
「もう二度と、笈くんに悲しい思いをしてほしくないの」
見つめ合う、祖母と珠央……。
「はい! 絶対、させません!」
おおー言い切ったな、珠央。
「良かった! これで安心だわ〜約束よ〜」
「はい!」
「笈くんは顔もいいけど、中身もいい男だ! 信じて付いていけば、幸せにしてくれるよ!」
「はい!」
「あら、古ーい! 自分から幸せになりにいけばいいのよ! 何歳年上だろうが尻に敷いちゃいなさい!」
「はい! あはは!」
じいちゃんばあちゃんに挟まれて大変だな、珠央。
良かった。祖父母とも仲良くしていけそうだ。
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