3、この世界について説明しよう

 災厄獣は、人工的に作られたモノだと言われている。

 何故作られたのか、いつ作られたのかは分かっていない。だが、真偽不明の噂だけは大量にあった。

 ある発展途上国が作り上げた戦争のための生物兵器なのだとか。

 かつて絶滅した恐竜を蘇らせようとして失敗した末に生まれたものだとか。

 誰にも理解されなかった頭のおかしい天才科学者が、己の力を見せつけるために作った合成獣キメラの成れの果てだとか。

 いずれにしても、はっきりしているのは、人工的に作られたはずの災厄獣はいつの間にか人の手では制御しきれなくなり、いつしか世界にとっての大きな脅威になってしまったということだ。

 災厄獣に通常の兵器は通用しない。核兵器ですら、効果がなかった。

 都市は破壊され、植物や動物は食い尽くされた。人間も例外ではない。

 抵抗する術がない人々は、ひたすら災厄獣から逃げ隠れるしかなかった。

 見つかったら食い殺される。地下深くに穴を掘ったり、街の周りに大きな壁を築きあげたりと、人々は涙ぐましい努力を続けていた。

 やがて────多くの犠牲を払った後、ようやく、災厄獣の急所が喉の奥にあること、ある特定の周波の光であれば、災厄獣を攻撃できることがわかった。

 それで開発されたのが、赤光刃しゃっこうじん蒼光銃そうこうじゅうである。

 そして、同時期に、ある特定の周波の光を自在に操ることができる人間が、たびたび生まれるようになった。

 彼らは、光を炎や雷に変換することができた。

 火炎放射器で焼かれても胸毛ひとつ焦がさなかった災厄獣が、彼らが生み出した炎で火だるまになった。

 脳天に稲妻が落ちても平然としていた災厄獣が、彼らが生み出した雷では手足を硬直させ、感電していた。

 まるで本の中の魔法使いのようだった。また、災厄獣と互角に戦うことができる彼らは、まさに人々にとっての英雄ヒーローだった。

 英雄ヒーローになれる人間は少なかった。

 戦う手段を手に入れても、災厄獣は相変わらず最凶の脅威であり続けた。

 そして────いつしか、人々は、赤光刃や蒼光銃を手にした多くの守護兵ガードマンと、ごく僅かな英雄ヒーローに守られて暮らすことが、当たり前になった。

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