第15話 神に問う

「どうして話してくださらなかったのですか?」


 神田は椅子に座るよりも先にそう切り出した。ガーデンチェアに腰掛ける駅神は、その問いかけに対して口角を上げながら含み笑いを返す。

 その笑みを残したまま、ティーセットが載せられたテーブルの上で長い指を組んだ。


「怒った顔が『京介』にそっくりだ。やはり、京太郎は父親似だな」


「ふざけないでください」


「私はふざけてなどいないさ。京太郎の質問に真剣に答えてやろうと思っているよ」


 駅神は言いながら、神田の下げられた両手に視線を巡らせた。土産がないことを残念に思ったのか、髪と同じく白の混じる眉を八の字に下げる。


「今日は……お菓子は無しかね」


「ええ。今日は楽しいお話をしに来た訳ではありませんからね」


「そうか。残念だ」


 駅神は背もたれに体を預けると、湯気の立つ注ぎたての紅茶で喉を潤わせてから細く息を吐いた。ティーカップをソーサーの上へと丁寧な所作で戻し、神田に向き直る。


「では、楽しくないお話でも聞くとしようかね……」

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