第23話 椿の花とチョコレート
『喜多由伸』は、新幹線N700系車両に最後尾から乗り込んだ。先頭の運転席に向かいながら、黒い動乱を片手に車内を見回る。
この日、喜多の機嫌は余り良くなかった。原因は娘の買ってきた浴衣の柄。「友達と夏祭りに行くために買った」と燥ぎながら見せてきたその浴衣は、鮮やかな赤い椿の柄だった。
喜多は、椿の花が余り好きでは無かった。会えなくなった――消えて行った大切な存在を思い出すからだ。同じ理由で、チョコレートも苦手だった。あれ程好きだったのに、今は見るだけで悲しさが込み上げてくる。
娘の前では悟られないように笑顔を取り繕った。しかし本心は、何故この柄にしたのか。と激しく娘を攻め立てたい気持ちだった。
喜多が初めて配属され、鉄道員としての力を授かった駅はもう無い。駅が廃止された直後は、実の父――どちらかと言うと兄のように慕っていた駅神の最後の姿が気を抜けば浮かぶような状態で、休職を余儀なくされた時期すらあった。
喜多は、その原因が駅神を思い出してしまう環境にいるからだと結論付け、人事部に異動を申し出た。
――出来るだけ遠くに飛ばしてください。
人事部は喜多の無茶な願いを受け入れ、彼をここ福岡の地に移動させた。福岡県は、NR関西の営業地域の中で最も南の端である。最初は慣れない環境に戸惑いもしたが、今ではすっかり腰を据えている。
喜多は、ガランとした車内を黙々と歩いた。何か落とし物がないか、異常がないかを車両基地にて最初に確認するのも運転士の仕事の内だ。隅々まで目を凝らしながらチェックしていく。
最後尾から運転席までの十六両という長い道のりを歩き終え、喜多は運転席に通じる扉を開けた。あまり広くない運転席に入り、動乱を置いてから椅子に座る。ズボンのポケットから懐中時計を取り出し、ベルトに繋がっているチェーンを外して運転台の懐中時計置きに置いた。
今日の天候は晴れ。気持ち良く運転出来そうだ。
喜多は、深呼吸をして肩の力を抜いた。いつも運転前に行っている自分なりの集中方法だった。
福岡に来てから、大阪に居た時とは比べ物にならない程集中出来ている。大阪に居た時は、駅が存在していた路線名を聞く度に動悸がしていたのだから当然だろう。と思った。『片町線』という路線名称が思い出されそうになり、喜多は慌てて首を振った。発車前に余計なことを考えるなど言語道断。
――これから自分は沢山の命を乗せて運転するのだ。決して集中力を切らしてはならない。
***
十九歳の喜多は、駅の地下通路を小走りで進んでいた。目的は駅神に会うため。
特に重要な用事があるわけではない。ただ、お話がしたいのだ。
ここ、片町駅の駅神はとても優しくてフレンドリーで、近所に住んでいる歳の離れたお兄さんのような雰囲気である。最初の頃は、結界の中に入るのさえ緊張した。だが一年が経った今では、休憩時間の度に結界を訪れるようになってしまった。
助役からは幾つか小言を言われたが、これが自分なりのストレス発散法なのだから簡単に止めることはできない。それに、駅神は「いつでも来てください」と言ってくれている。
地下通路の先の錆の浮いた金属扉が視界に入り、喜多は気分を浮き立たせた。上部に注連縄が掛けられた扉を押し開ける。中には木製の小さな祠。ここから駅神の結界内に侵入することが出来る。
覚醒した時は駅のホームへと誘導され、そこから侵入したが、列車の運行中にそんなことは出来ない。ホームは特別な出入り口で、この祠こそが主な出入り口なのだ。
喜多は祠の前に置かれた、これまた金属製の椅子に腰掛け目を閉じた。全身の力を抜き、結界内への侵入を試みる。この動作を、もう何度繰り返しただろうか。
程なくして車酔いのような感覚に襲われた。
片町駅の依代は『椿』。結界の中は、椿の木で満たされた日本庭園のような趣のある空間である。ホーム同士を繋ぐ石造の橋を渡り、目的の場所を目指す。線路は澄んだ水で満たされ、椿の枯れ葉が流れていた。
駅神は、今日もいつもと同じ場所にいた。結界内に建っている茶室、その縁側に座っている。大好物の串団子を頬張っているのも同じだ。縁側の目の前には、先ほど渡った小川の源流となっている大きな池がある。水面には沢山の椿の花が小舟のようにプカプカと浮かんでいた。
喜多が近づくと、駅神は足音に気付いて顔を向けた。ニコリと、マネキンのように整った顔に笑みを浮かべる。
「こんにちは」
「こんにちは。今日のお団子も美味しいですか?」
そう問いかけると、駅神は「ええ」と顔を綻ばせながら頷いた。駅神は串に残っていた最後の蓬団子を頬張ると串を丁寧な所作で左隣に置かれた漆喰のお盆に乗せた。そのお盆には、既に串が三本も置かれていた。つまり、今ので四本目。
「駅神様、お団子の甘い匂いがします」
喜多は言いながら、お盆の置かれていない右隣に腰掛ける。数秒置いて、駅神が突然顔を近づけてきたために酷く驚いた。
相手は神様であり、そんな気なんて起こる訳が無いのにも関わらず、顔面が火を吹くように真っ赤になった。
「な……何ですか?」
驚きと緊張で声が裏返る。駅神は目を閉じて匂いを嗅いでいた。そして、ゆっくりと目を開けて喜多を見つめる。白い詰襟が似合うように設計されたのでは? と思ってしまうような美しい顔。
「喜多君からも甘い匂いがしますよ。何を食べたのでしょうか……?」
「えっと、チョコレートですけど」
「チョコレート……ですか? 聞いたことがありません」
チョコレートという単語に、駅神は首を傾げ目を瞬かせた。チョコレートが大好物の喜多にとって、その反応は衝撃的だった。
――チョコレートを食べずに生きてきたなんて、今までの人生を半分は損している! いや、神様だから人生ではないのか……では何だろう? いや、とにかく駅神様にもチョコレートを知ってもらわなければ!
喜多は謎の使命感に駆られ、制服の内ポケットに入れていた個包装のチョコレートを一つ取り出した。金色の包み紙に包まれた小さな長方形の物体を見せ、その包み紙をゆっくりと剥いでいく。
「これが、チョコレートです」
「……何だか、かりんとうみたいな色ですね」
駅神はチョコレートを摘み上げると、興味深そうに様々な角度から眺めた。「随分と薄い」等と呟きながら匂いを嗅いでいる。
「食べてみてください」
「平気ですか?」
眉間に僅かに皺を寄せ、不審がる駅神の姿を喜多は初めて目撃した。どこか面白くて口元が自然と孤を描く。
「平気ですよ。さあ」
駅神は恐る恐る、初めて目にした得体の知れない食べ物を口に入れる。
喜多は「駅神様の口に合わなければどうしよう」という不安を抱えながら、緊張感を持って駅神が感想を口にするのを待った。
駅神は不安そうに口を閉じ、襲い来る恐怖を予感しているように顔を顰めていたが、その顔はチョコレートが溶けるように消え、代わりに笑顔が浮かび上がった。
「如何ですか?」
喜多はそう尋ねた。駅神の笑顔を目の前にしており、もう答えは分かっているようなものだった。
「甘くて美味しいです」
「でしょう! 僕の大好物なんです!」
駅神の口に合ったことと、自分の好みを理解してもらえたことの両方の嬉しさが同時に込み上げて来て、喜多は思わず縁側から立ち上がった。
やった! と万歳をして喜ぶ喜多を駅神は珍しく声を上げて笑って見ていたが、直ぐに両手の手のひらを上に向ける『頂戴のポーズ』をとり「もっとください!」と喜多に要求したのだった。
喜多は駅神の予想外の行動に驚き、反射的に内ポケットに入れていたチョコレートを全て取り出して、駅神の両手のひらの上に積み上げた。
片町駅は小さな駅だ。木津を起点とする片町線の終点として、大阪城の麓に駅を構えている。開業は明治二十八年。今年で百一周年になる片町駅は来年、一大イベントを控えている。NRが国有時代から進めて来た『学研都市線』の全線開通だ。片町駅はその路線の駅として地下化することが決まっている。
喜多は、改めて見慣れた片町駅を見渡した。
他の駅に先駆けて導入された自動改札機、二面二線の頭端式ホーム……。五年前、つまり喜多が就職する前に解体準備のためにプレハブの仮駅舎になってしまっていたが、本来の駅舎はモルタル造りの二階建てで中々洒落た外観である。ホームも一面二線だった。
駅務室には昔の片町駅の写真が何枚も飾られており、喜多は特に入り口のクラシカルな木造ガラス扉をとても美しいと感じていた。
決して利用客は多くはないが、地元の人達に愛されている素晴らしい駅。喜多はこの駅が、大好きな駅神のいる駅が、ずっと愛され続けることを信じていた。
――信じていたのに……。
***
「駅名が変わる?」
「そうだ。そう……通達があった」
助役の『新田』が、辛そうに唇を噛んだ。必死に声を絞り出しているのが分かる。喜多は、新田が何故辛そうにしているかが分からず、首を傾げた。
駅名が変わることは、頻繁ではないが起こり得ることだ。現在の移設先での仮駅名は、今と同じ『片町』。それが見直しになっても、移設に際して駅名が変わった『旧片町駅』であって何ら問題は無いはず。
そんな感じで一切の危機感無く新田の話を聞いていたが、次の言葉で脳内の楽天的な考えは一瞬で吹き飛んだ。
「定期券は継承されないそうだ。つまり移設では無く、全く別の駅を『新設』するということだ」
「新設……? つまり、駅神様は――」
「死ぬよ……。彼は片町駅そのものだ。片町駅は廃駅になるんだ」
――廃駅。その言葉が、心に深く突き刺さる。
「どうして……! どうして、片町駅の移設ではいけないんですか! 直ぐそこに三百メートル程移動して地下化するだけじゃないですか!」
「喜多、もう決まったことなんだ。そのような形を取ると」
新田が面倒くさそうにため息をついたのが聞こえ、喜多は思わず声を強めた。
「新田助役は、駅神様が死んでしまって悲しく無いんですか?」
「悲しいに決まっているだろう!」
喜多は新田の怒号を初めて聞いた。驚いて両肩が跳ねる。
「私だって、こんな結末は……許せないに決まっているじゃないか」
新田は泣いていた。手のひらで止めどなく溢れる涙を拭い、声を振るわせながら話す。
「駅神様には、まだ話していない……。あの人の絶望する顔を……悲しむ顔を見る勇気が無いんだ」
新田は両手で顔を覆うと、力無く「すまない」と告げて脱力したように椅子に腰掛けた。
***
駅神はいつもの場所で団子を食べていた。今日はみたらし団子。それを頬張り、幸せそうに目を細める姿を見ていると「あなたは来年死にます」とはとても言えなかった。
「新田助役が美味しい団子屋さんをご存知でして、私のために手配してくださったんです」
「そうですか。美味しそうですね」
喜多は精一杯笑みを浮かべて乗り切った。助役が言えないというのなら自分が! と根拠のない自信を持って来たが、本人を目の前にしてそれが不可能だと気付いた。
「一本如何ですか?」と勧めてくる駅神に、「どうぞ遠慮なく」と返し、再び精一杯の笑顔を顔に貼り付ける。
――この笑顔は、あと一年足らずで失われてしまう。
その事実が、喜多の心をゆっくり、しかし確実に押しつぶしていく。
「そのみたらし団子は、助役からのせめてもの贈り物なのだろうか」と喜多は考えた。
死にゆく駅神への、せめてもの――
***
片町駅の営業終了まで半年を切った。
その日を境に、駅神は「体が痛い」「力が入らない」等と体の不調を訴えるようになった。
「もう隠せない」
それが息子達で話し合い、出された結論だった。
問題は、誰が駅神に『死』を告げるか――
駅神に死を告げるなど、かなりの重責だ。恨まれる可能性すらある。そのため、皆が躊躇した。本来は駅の責任者である新田がその立場にある。しかし、喜多は自ら立候補した。
駅神に死を伝えることで、自身の気持ちにケジメを付けたかったのだ。
***
駅神は、その日も縁側にいた。だが、座ってはいない。体を横たえ、目を閉じている。喜多が近づいても、駅神は目を開けなかった。お盆には新田からの贈り物と思われる三色団子が五本乗せられていたが、一切手をつけられた形跡が無い。
「駅神様……喜多です」
そう声をかけると、駅神はゆっくりと目を開けた。しかし、視線は全く動かない。
「喜多君……ですか。すみません……こんな姿勢で」
「いえ。無理をなさらないで」
そう言って駅神の隣に座り、丸められた背中をそっと撫でた。骨が浮いているのか、硬い凹凸が手に触れる。
「どこが、痛いですか?」
「……全体です。体全体が、酷く痛むんです」
「どんな痛みですか?」
こんなことを聞いてはいけないのではないか? そう感じたときには既に言葉になっていた。喜多はそんな自分を軽蔑し、強く唇を噛む。
「体が、内側から崩れているような……そんな痛みです。痛くて、辛いのです」
『体が内側から崩れる』その表現にドキリとした。ここで話さないと、駅神は何も知らないまま死を迎えてしまう。
自分から立候補したんだ! と気持ちを奮い立たせ、緊張で乾いた口を開いた。
「駅神様……その、大変言い難いのですが――」
「私、死ぬのでしょう?」
喜多は驚いて、背中を撫でていた手を止めた。
――今、何て……。
「知っていたのですか?」
「ええ。何となく分かるのです……。変ですよね、死んだ経験も無いくせに」
駅神はそう言って小さく笑った。笑うと痛みが強まるのか、歯を食い縛り体を硬らせる。
「移設では無く、新駅の設置という方向になったそうです。駅名も全く別名になると」
「それは仕方ありませんね。私もここまでの命だったということです」
「申し訳ありません。何もできなくて」
「喜多君が気にすることではありません。やっと、私の番が回ってきたのですよ」
喜多は駅でNRの歴史を勉強した際、関西圏だけでも沢山の駅が廃止されていったことを知った。それらの駅は時代の波に呑まれ、続々と姿を消した。そして今、片町駅もその波に呑まれる時が来たのだ。
「僕は嫌です。駅神様が死んでしまうのは」
喜多は涙を堪えながら言葉を紡ぐ。
「優しいですね。私のために泣いてくださるのですか」
駅神は小さく笑い、そして呻き声を上げた。痛みの強さを物語るように、投げ出された白い手が強く握られる。
「……こんなに優しい息子を持てて、私は……誇らしいです」
駅神の言葉に、喜多はとうとう堪えきれなくなった。喉の奥から大きな嗚咽が漏れ両目から涙が溢れた。両手を使って拭うが、まるで追いつかない。
「泣いてはいけませんよ。あなた達には、最後まで仕事をしていただかなくてはなりませんから……」
駅神は弱々しい声で話すと、虚ろな目を閉じた。
***
片町駅の廃止を翌日に控えた日の昼休み。喜多は結界内を訪れたが、結界内は既に目も当てられない惨状だった。
全体にガスのような
「なんだよ……これ」
喜多は別世界のようにすら思える結界内を走った。駅神の容体を一刻も早く確認をするために。
駅神はいつもの縁側に横たわっていた。殆ど生気が感じられず、靄のせいで白い詰襟が薄汚れて見える。
「駅神様!」
喜多は縁側に駆け寄り、駅神の体を慌てながらも優しく抱き起こす。力無く閉じられた両目は開かなかったが、血色の悪いカサついた唇が僅かに動いた。
「き……た……君……」
「はい、喜多です! 駅神様、死んではいけません!」
そう強く呼びかけたが、それが無茶な呼びかけだということは、喜多自身が一番よく分かっていた。駅神は荒々しく呼吸し、懸命に声を絞り出す。
「今更になって……死が、こ、怖くなってきたんです……」
駅神の体は限界が近いのか、時折引き攣るような痙攣を起こしている。
「私は……あ、愛されてなど……い、いなかったの……かと」
「そんなことはありません!」
喜多は、駅神の立てた仮説を即座に否定した。それは間違っている! そのように強く主張できる材料を持っていたから。
「私は駅に出勤する際に、いつも目にする物があるんです……」
「何だと思いますか?」と駅神に尋ねる。駅神は小さく首を振った。
「地元の方が設置したのぼりです。それには、『片町駅名存続』と書かれているんです!」
駅神の体が、再び軽い痙攣を起こす。
「貴方は愛されているんですよ!」
そう叫んだ時、閉じられていた駅神の瞼がほんの僅かに開いた。そして、目尻から一筋の涙が零れ落ちる。
「この駅を利用している人達は皆、駅神様に死んでほしく無いと思っています。なのに……」
喜多の目から溢れ出した涙が、駅神の頬へと落下した。駅神の流した涙と混ざり合い、喜多の制服の袖口を濡らす。
「どうして……こんなことに」
「き……た……君……」
「はい」
喜多は両手で乱雑に涙を拭うと、駅神の顔を見つめた。駅神は両目を僅かに開き、殆ど残っていないであろう力を振り絞って笑っていた。
「チョコレートを……い、いただけますか……?」
***
来ないで欲しいと願っていた三月八日がやって来た。
楽しみにしている日は来るのが遅いのに、どうして来てほしくない日は来るのが早いのだろうか?
喜多はそのようなことを考えながら、充血気味の目で改札口の真上に吊るされた横断幕を見つめた。
『永らくの御利用ありがとうございました NR片町駅』
胸がズキリと痛む。横断幕に貼り付けられている記章の赤色が、やけに鮮やか見えた。
初めてNRを恨んだ。こんな汚い感情など持ちたくなかったというのに。泣きすぎたのか、もう涙は出ない。そんな自分が薄情な気がして、さらに悲しくなった。
――駅神様は、今どんな状態だろうか。
頭の中に思い出したくも無い結界内の惨状が描かれる。脈が乱れ、喜多は小さく悪態を吐きながら頭を振った。
あの時に嗅いだ悪臭が、鼻の奥にこびり付いて離れない。
しかし、今自身に出来ることは一つ。
駅神を――片町駅を、賑やかに送り出すことだけだ。
駅は朝から激しい混雑を呈していた。
片町駅での勤続年数が最も長い新田ですら、「こんな片町駅は初めてだ」と唖然とするほどの人出。鉄道ファンだけで無く、地元住民も多く駆けつけていた。この地で百年以上愛された駅の最後を見届けようと集まってくれたのだ。
その日、片町駅では『さよなら片町駅記念入場券』を販売したり、片町駅の歴史を纏めたポスターを貼り出す等、駅の最後に立ち会う人々と思い出を共有できるように精一杯の催しを行った。
そして、二十一時三十分。
片町駅発の最終列車、普通四条畷行きの発車時間を迎えた。
「ありがとう!」「さようなら!」と大きな声が響く中、赤いテールランプが遠ざかって行く。
その赤い光は、まるで駅神の命の灯火の様だった。
ゆらゆらと揺れながら、どんどんと小さくなり――
やがて、完全に見えなくなった。
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