第2話 幼い記憶

ーーーーー・・・幼いころの話だ。

俺はどうしようもない両親、くず野郎の間に生まれた。

人は生まれながらにして平等ではない。子供は親を選べないのだ。

そんな運試しでハズレを引いた俺の幼少期は散々なものだった。

食事もろくに与えられず、学校にも行かせてもらえない。極めつけは、やれ腹の虫が悪いだ、やれ生意気だと難癖をつけながら殴られた。


そんな最悪な生活だったが一つだけ楽しみがあった。


両親たちが寝静まった時間にベランダから外へと出かけることだった。

靴も履いていなかったがそれよりも外の広さに驚き、五感で感じるすべてが心地よく目新しかった。

夜はそんな冒険をほぼ毎晩のように繰り返し、昼間は冒険で見聞きしたものを思い出すのが習慣となっていた。


だが、何事も変化しないものはない。それはこの生活とて例外ではなかった。

とある夜、いつものように冒険を楽しんでいたところ、通報され警察に保護されたのだ。

そのあとの出来事はよく覚えていない。ただ一つ言えることは、その後俺は両親と会うことはなかった。


しばらくすると俺は孤児院に引き取られた。決していい環境とは言えない場所だっが・・・。

今だからわかる。その孤児院を経営している女はろくでなしだった。

女は自己愛が非常に強く自分の半生・・・キャリア、経歴に納得がいかない様子だった。

そこで女は子供に自己投影をし自分を満たすために孤児院を経営しようと思ったのだろう。

女はスポーツ、勉強様々なことを子供に詰め込んだ。うまくできないものが出た時はヒステリックを起こし暴れるのでたちが悪い。


だが、この時期の俺にはありがたかったかもしれない。


学校に通わせてもらえず周りより勉強が遅れていた俺は、苛烈に知識を詰め込まれた。

そのおかげもあって平均ぐらいまでの成績まで押し上げてもらえた・・・いや、そこまでしか押し上げることができなかったのだ。

女はさらに強く俺に当たり始めた。なぜこれくらいできないんだ。と口癖のごとく俺に言葉を浴びせかけてくる。


そんな日々に音を上げた・・・・もとい、さじを投げたのは女だった。

出来損ないを養う余裕はないといわれ、とんとん拍子で中学を卒業と同時に孤児院を追い出された。


少しづつかき集めてきたお金と着替えが手元にある。



ーーーーーーーーーーーーどうしてこうなった?-----------



なぜ俺の両親は毎日いらだっていたのだろうか?

なぜ孤児院の女はあそこまで我を通せるのだろうか?


生みの親と育ての親を比べて違いを探す。

しばらく考えてひとつの答えが口から漏れ出る。


「金か・・・?」


両親は金がないのは自分のせいだと殴りつけ、ギャンブルで金をスッた日はいつもより機嫌が悪かった。

孤児院の女は今思えば金は持っていたのだろう。

孤児院を経営している割には、あまり寄付に対して積極的ではなかった。


金を持っていないから持っていないものは不幸になり、金を持っているものは自由にふるまえる。

人は生まれながらにして平等ではない。まさしくその通りだと思う。

だがそのまま不幸の泥沼に沈み続けなくてもいいはずだ。


「泥を啜ってでも這い上がって見せるっ・・・・!!」


決意の言葉をつぶやきながら佐久間修一は歩き出した。

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現実世界でダンジョンに潜るにはいろいろと大変なようです。 えちだん @etidan

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