第4話見ているもの

一つの例としてあげた彼女であるが、どうであっただろうか? 物と目が合うなどあり得ない? ちゃんと商品を自分で選べ? 選ぶ理由として不適切? それでは、あなたの選ぶ理由を教えていただきたい。実物を見ずに名前だけ、画像だけで選びボタンを押しただけで買った気になっているあなたの理由。それはどのようなものだろうか。「商品」であり、選ばれる側である私たちに教えて欲しい。あなたは、私たちの何を見ているのか。


私は「物」である。私たちは「もの」である。使われ、消費されるためにつくられ用意された商品である。使う側であるあなたには、もちろん選ぶ権利がある。より良いものを手に入れたいだろう。貴重な金を支払うならば失敗はしたくないだろう。価格に見合った働きを、あなたは私たちに強要するだろう。そして、それらが満足できなくなったとき、あなたは私たちを手離すのだろう。すてるのだろう。


すてられた私たちの気持ちを考えもせずに。


いつかすてられる私たちを少しでもかわいそうと思うのならば、どうか私たちにも与えて欲しい。誰かに選ばれる権利を。そして、選ぶ人を選ぶ権利を。


例えば、彼女を見つめた青い目のぬいぐるみのように。これからを共にする人を、私たちにも選ばせて欲しい。手に取る人に視線を送る機会を与えて欲しい。

私たちは見つめている。たとえ目がなくとも、あなたを見つめているのだ。だから、あなたたちにも見てもらいたい。私たちの姿を、本質を見てもらいたいのだ。そして、たくさんいる私たちの中から選んでもらいたい。

そして、できれば彼女のように気づいてもらいたいのだ。「誰かから視線を感じた」と。私たちがあなたを選んだ理由が、きっとその視線には込められているであろう。


もしも、あなたと私の目が合ったら。それは互いに選んだ相手だということ。

どうか安心して、その手をのばして欲しい。




『私』を見てよ。目が合うくらい、私を見てよ。

見ていますとも。私たちと目が合うのは偶然ではありません。なぜなら、私があなたと。あなたが私と。目を合わせようと選んだ結果がその出逢いなのです。


今日も私は目をあわせようとあなたを探すでしょう。




ほら。今、目があいましたね?

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