ポイントカード・マジック

結城藍人

ポイントカード・マジック

 今朝方カクヨムで読んだエッセイ※で、スーパーのポイントカードの話が載っていたのですよ。ポイント3倍セールとかあると思ってたら、5倍とか7倍とか、果ては10倍とかあるんだけど、ポイントセールじゃない日には買い物しなくなっちゃうんじゃないの? と。


 確かに、ちょっと聞くと「ポイント10倍」って何か凄いように聞こえるんですよ。ところが、これが商売のマジックってヤツでして。


 これは以前にベストセラーになった『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(山田真哉・著、光文社新書、2005年)に書いてあったのですが「20人に1人の割合でレジ会計時に購入商品を無料にする」ってセールをやった店があったのだそうですよ。ちょっと聞くと「そんなことやって大丈夫なの?」って思うのですが、これ実は総売上ベースで考えると「全商品5%割引セール」と変わらないんだそうです。


 20人に1人って、要するに全体の5%なワケですよ。全体の5%にあたる客を無料にするってのは、つまり店全体の商品を5%割引にしてるのと同じだってことです。


 「全品5%割引」だったら、別に珍しいほどのセールじゃないですよね。それが「20人に1人無料」になると途端にインパクトがあるセールになるという。


 さて、その理屈で考えてみると、そもそもポイントカードっていうのは、たいていは100円につき1ポイントです。これって要するに「常時1%割引」ってのと同じなんですよ。


 もっとも、小田急ポイントカードってのは変動制で、スーパー「小田急OXオーエックス」での使用の場合、前月の買い物総額が2万円未満の場合は200円につき1ポイントだったりします。通常のポイントカードの半分ですね。ただ、月額買い物総額が2万円を超えると200円につき3ポイントに上がるという。もっとも、私の場合は小田急OXで月額2万円も買ったりしないので、そんな率になったことは無いんですが(笑)。


 それはさておき、「常時1%割引」を基準に考えると、「ポイント3倍セール」ってのは「3%割引セール」、「ポイント5倍セール」は「5%割引セール」(=「20人に1人無料セール」と同等)、「ポイント7倍セール」は「7%割引セール」、「ポイント10倍セール」は「10%割引セール」に相当するワケです。


 確かに「10%割引セール」まで行くと、ちょっとお得感は出てきますが、「3%割引セール」とか「5%割引セール」くらいだと、そんなにお得感はありませんよね。


 それが「ポイント5倍」になると、とたんに「何か凄そう」になるという。アレですね「界王拳5倍!」とか、そういう感じなのかなと(笑)。


 これがポイントカードのマジックというヤツなのですよ。


 なお、特売セールとかをしないで「毎日がエブリディお買い得ロープライス」を売りにしてることで最近人気の「OKオーケーマート」は会員カードも同じようにポイントカードシステムではなく、潔く「会員は3%割引」です。言うなれば「毎日エブリディポイント3倍」なんですね(笑)。


 まあ「OKマート」については、最近「今年のサンマは不味くて高いです」とか書いてたのがネットニュースで話題になった「正直オネストカード」とかも売りなんですけど(笑)。


 というわけで、確かに「ポイント十倍」って聞くと凄そうなんですが「10%割引」程度だったら、毎日消費期限ギリギリの食材なら「20%割引」とか「半額」なんてのも普通に見かけますし、そうでない生活消耗品だって「特売」とかだったら10%どころじゃない割引率で売ってるのを知ってるので、実は「ポイント十倍」とかにこだわったりするよりは、閉店間際の店とか開店直後の店で割引率の高い食材を探したりとか、チラシの特売品でどれが安いかをチェックして買ったりする方がお得だったりするんですよね。


 ただ、それも面倒っちゃ面倒なんで、むしろこれからは「OKマート」式の「毎日がエブリディお買い得ロープライス」型が人気になっていくのかもしれません。


※宇部松清様のエッセイ『好きなことを、好きなだけ』。通称『宇部ッセイ』。面白いので、ぜひ読んでみてください。今回のネタ元は『第645話 何倍までいくのか』https://kakuyomu.jp/works/1177354054887527530/episodes/1177354054998571143です。

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ポイントカード・マジック 結城藍人 @aito-yu-ki

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