第5話天使の日
今日も天使は天国でバケツをいっぱいにし、中身を降らして空にして、そしてまた中身を入れるために天国へ飛んでいくのです。
そんな天使と、バケツの中身が降り注いだ地上を見つめて神様は思うのです。
「今日はバケツの中に何を用意しよう」
今は全く地上を見ようとしないバケツの天使。
いつか天使は大人になったとき、彼は自分が何を振り撒いているのか理解するのでしょうか。
いいえ、その時はきっと来ないでしょう。
もし大人になったとしても、天使は降らすことを止めないのです。だって、バケツの天使は、バケツの中身をまくという仕事を神様からもらっているのですから。それは、神様からの「バケツの天使」への贈り物なのです。天使はきっと、やめることをしません。
今日も空にはバケツの天使。
空から降り注ぐバケツの中身は、まるで雨のよう。
今日は何が降るのでしょうか。
降ったものは、地上に生きる人たちに何をもたらすのでしょうか。
今日も空からバケツの天使。
ざあざあざあざあ
あめがふ
かつて、空の更に上にある天国には神様とたくさんの天使達がいました。
あるとき、一人の天使が神様からバケツとお仕事をもらいました。
「今日からお前はそのバケツの中身を降らせなさい」
「わかりました、神様」
あるとき、一人の天使が神様に尋ねました。
「神様、雨ってなんですか?」
「お前の持っているそのバケツの中身だよ」
あるとき、一人の天使が神様にもう一度尋ねました。
「神様、雨ってなんですか? ボクが持っているバケツの中身が雨なんですか? バケツに入れられたら雨なんですか?」
「バケツの中身をお前が地上へ降らせたら、それはどんなものでも雨になるんだよ」
かくて、今日も雨を降らせる天使でありましたとさ。
彼にとってバケツの中身はなんでもよいのです。バケツの中身を降らせることに意味があるのです。
彼が地上へと降らせれば、それはどんなものであっても「雨」となります。結局、彼にとって雪も霰も雹も霞も霜も雲も雷でさえも降らせればただの「雨」なのです。
今日も地上は雨天気
空から「なにか」が降ってくる
空を仰げば一人の天使
バケツを持っておどってる
天使が通れば雨が降る
降ってみなけりゃバケツの中身はわからない
雨雨降れ降れ、今日も降れ
ラッキー ハッピー アンラッキー
どれが降るかは天気次第
どれが降るかは神次第
雨雨降れ降れ、もっと降れ
バケツの中身よ、もっと降れ
降らせる天使は雨天使
バケツを持った雨天使
さあさあ、地上のみなさん
ご覧あれ
今日も今日とてバケツの天使が通ります
傘のご用意はいかがかな?
バケツのなかみ 犬屋小烏本部 @inuya
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