第3話 鍵師の少年4
「アサヒくん、この前たまゆら堂のお披露目のときにいたでしょう」
「アサヒでいいよ。俺もトウカって呼ぶ。――たしかに披露目は見に行ったけど、なんで知ってるの?」
少年の記憶にはトウカと目があったことは残っていないらしい。
「私もあそこにいたんだけど、アサヒみたいな小さい子がいるのが気になったから覚えていて――、あ、ごめん。小さいって言っても私より長く生きているんだよね」
あやかしは見た目より長く生きている、というウツギの言葉を思い出してトウカは慌てた。どうにも彼の幼い見た目につられて、年下に話すような口ぶりになってしまうのだ。しかしアサヒは首をふって「いいよ、べつに」と言った。
「あんたよりは長く生きていると思うけど、俺はあやかしの中じゃまだ子どもだし。背も小さいから。あ、でもすぐ大きくなるからな!」
背伸びをするアサヒの様子には幼さがあって、そっかとトウカは笑った。
「たまゆら堂の、アオヒメだっけ。綺麗な子だったね」
艶やかな着物に包まれた美しい少女のことを思い出した。今でも彼女の姿は鮮明に覚えている。朱に縁取られた瞳、ぷっくりとした唇。微笑を浮かべた美しい顔。
アサヒとアオヒメは同じ年頃のようだった。だからきっと、アサヒは彼女に惹かれているのだろう。トウカはそう思ったのだが。
「あいつは、昔の方がよかったよ」
アサヒはそっぽを向いて呟いた。
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