魔物は悪いもので、討伐されるもの……この固定観念からのアンチテーゼの作品は多いです。そういった作品では、魔物たちの視点で、人間たちも自分たちに残虐なことをしている、的な語られ方をしますが……本作品はそんな悲壮感が微塵も感じられない、とってもおバカな(←褒めてます)設定が光ります。
「ダミーの城を用意しろ! ダミーの魔王は作れんのか!」
という第一話の魔族の会話からしてぶっ飛んでいます。
その昔、人族と魔族で奇妙な取り決めが行われ、魔族が人族を襲うというのが「やらせ」になり、その事実を一部の人魔の上層部しか知らない……こんな設定だけでも面白い物語になりそうなのですが、ここに被せられる主人公のエインズの設定が、その斜め上を行くぶっ飛び具合です。
――強さゆえに落ちこぼれて、何としてでも弱くなりたい。
その意味不明な動機 & 見掛けによらない強さ & 人魔間の奇妙な取り決め
これが掛け合わさって、全編通して勘違いの連続で、作中の言葉を借りれば「勘違いを勘違い」し「何が勘違いか分からなくな」ること請け合いです。
しかし、最強無敵のエインズだからとっていつでものんびりしているわけでもないです。勝てるとわかっていてもなかなか緊張する場面——ニーナやチャッキーを全力で守ろうとする友情――も出て来るので,そこは作者様の描写力のすごさでしょう.
最後に、この作品のタイトルが「チャッキー」なのはなぜか。最初はわかりませんでしたが、彼の意外な真相が出て来たり,どうでもいいと思われていたアイテムが最後に大活躍したりと、「どんでん返し」のタグに偽りなしです。