ビーンズ文庫様より書籍化記念! おまけSS
鶏がら侍女と冷酷皇帝達の夕餉 その1
~作者からお知らせ~
魔法のiらんど大賞2021恋愛ファンタジー部門特別賞を受賞した本作ですが、
『身代わり侍女は冷酷皇帝の『癒し係』を拝命中 『花の乙女』と言われても無自覚溺愛は困ります!』
と改題・改稿のうえ、9月1日ビーンズ文庫様より発売予定となりました~っ!ヾ(*´∀`*)ノ
イラストは唯奈先生に担当していただいております! とっても可憐で可愛いトリンティアと、凛々しさと甘やかな色気あふれるウォルフレッドをお描きいただきました~!( *´艸`)
(近況ノートに書影を載せております)
ここまで来ることができしたのも、応援してくださる皆様のおかげです! 本当にありがとうございます!(深々)
そして、書籍化記念! ということで、本日より発売日前日の8月31日まで、3日に1回の更新頻度でおまけSSを4本連載いたします~!
内訳は本編中の裏話が1本、本編後のおまけが3本です!
本編後のおまけの1本は、連載終了後に近況ノートで完結記念としてアップしたものなのですが、かなり前のため、読まれていない方もいらっしゃるかと思い、今回こちらにアップいたします。ご了承くださいませ。
他は全部書き下ろしました! 少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです~!(ぺこり)
◇ ◇ ◇
謁見の間の裏にある隠し部屋に待機した日の夕方。
「わぁ……っ」
目の前に広がるごちそうに、トリンティアは思わず感嘆の声を洩らした。
ウォルフレッドとゲルヴィス、セレウスの三人と一緒に囲んだテーブルには、トリンティアが見たこともないごちそうの数々が並んでいる。
骨付き鶏の香草焼き、豆と玉ねぎのスープ、
いや、故郷のサディウム領にいた頃、お祭りの時などにごちそうを見た経験はあるが、遠目にちらりと見ただけで、目の前でまじまじと観察したことはない。
しかも、トリンティアもこれを食べてよいだなんて……。
「あ、あの、本当に、私などがこんなにすごいごちそうをいただいてもよいのでしょうか……?」
びくびくと震えながら問うと、
「何を言っている?」
とウォルフレッドが碧い目を細めた。
「も、申し訳ございませんっ!」
やっぱり、一介の侍女にすぎないトリンティアなどが、ごちそうを食べてよいわけがなかったのだ。
飛びすさるように椅子から下り、床に平伏しようとすると、「おいっ!?」とウォルフレッドの大きな手に腕を掴まれた。
「何をしている?」
「お、お詫び申しあげようと……っ」
腕を掴む手の力強さと鋭い視線に、無意識に身体を震わせながら、なんとか言葉を絞り出す。
「わ、私などがお
もし、サディウム伯爵の前でそんな勘違いをすれば、容赦なく罵倒されていただろう。
がくがくと震えながら答えると、ウォルフレッドが呆れたように吐息した。
「何を勘違いしている? もちろん、お前も食べてよいに決まっているだろう?」
「え……?」
今度はトリンティアが驚く番だった。
ぽかん、とこちらを見下ろすウォルフレッドの端正な面輪を見上げる。と。
「ひゃあっ!?」
不意に立ち上がったウォルフレッドが身を屈め、トリンティアを横抱きに抱き上げる。
「なっ、な……っ!?」
驚きのあまり、とっさに声が出てこない。
ぱくぱくと水揚げされた魚のように口を開閉していると、元通り椅子に座らされた。
「何をどう勘違いしているのかは知らんが、朝食や昼食も同じテーブルで食べただろう? 夕食だけ別にする必要がどこにある? 余計な遠慮は無用だ。さっさと食え」
「あ、ありがとうございます……」
ウォルフレッドにはっきり言われて、ようやく食べてもよいのだと理解する。
だが、今まで食べたことのない豪華な食事に気後れしてしまって、手が出せない。
まごついていると、目の前にずいと皿が差し出された。皿を掴む武骨な手は、ゲルヴィスのものだ。
「嬢ちゃん、遠慮せずに食っていいんだぜ? 食わねぇと、陛下やセレウスに取られて、あっという間になくなっちまうぞ」
「大食漢は、わたしではなくあなたでしょう? 事実と異なることを言うのはやめてください」
左頬に傷のあるいかつい顔に笑みを刻んで告げたゲルヴィスに、セレウスが薄青い目をすがめて抗議する。
が、トリンティアの耳にはろくに入っていなかった。
ゲルヴィスが差し出してくれた皿の上には、骨付き肉やチーズを載せて焼いた蕪やキノコ、白パンなどがたっぷりと盛られている。香草やチーズのよい匂いに反応して、おなかがくぅと音を立てた。
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