八十三話――お祝いを受けて
「編入おめでとうございます。奨学金の手続きはなさいますか? 五年制や十年制他にも就業予定先にあわせて決めたり、転職があれば変更も利きますが……」
「とりあえず保留」
「? どこか
「いや。国からといえ金を借りるのは私の精神衛生上悪いのでとりあえず保留で願う」
「くす、かしこまりました。では、これから大変かと思いますが頑張ってくださいね」
「? ああ、そうする」
ヒュリアのある種虐めに遭いはしたが、一行は腹ペコりんなザラを引っ張ってバスナ区役所に来ていた。シオンの編入届を提出する為だ。なんでもこれをだすことで正式に国から身分証が学徒として発行されるそうだ。今日中にだせば、編入学式に間にあう。
だから、昼の前に来ておくことにした。ザラはクィースに情けない、と言われ、ヒュリアにもちょっとくらい堪えなさい、みっともない! と叱られて絶賛我慢中。
区役所を訪れたシオンの対応はまた、あのおじさんがしてくれた。最初は別の役所人がしようとしたが、そのひと、オッティと呼ばれているひとがなんとなく無理矢理感がある別件を指示して自分がシオンの対応を代わった。よほどの変人、とシオンは失礼思考。
クィースたちは後ろの方でひそひそのつもりだろうが、もそもそとシオンの美貌に中てられている、とかそういう趣旨のことを話している。イミフ。本当に、ここの人間も戦国の人間もみなすべからく目が腐っている、とシオンの阿呆は今日も続く。
続くよ続く。どこまでも。まあ、こんなことを考えたバカは一瞬後、場面転換で土の下にいくことになるのだが……。なので、クィースたちも以上には話さない。
シオンの地獄耳。どこまで音を抑えても体育館のあの騒音(?)を聞き取ってしまったくらいだ。ひそひそも無意味かもしれない。なので、礼儀的にひそひそしているだけ。
聞かれているとわかり切ってなお、言える勇気だとかは褒めてやってもいいがいい加減鬱陶しいのでシオンはオッティとやらの激励に応えて窓口を離れ、三人の頭を順繰りに軽く叩いてから出入口に向かっていってしまった。機嫌は結構悪めです。
最低ではなく、最悪でもないのでいいが、あまりよろしくはない。そうでなくても常に不機嫌そうなシオンだ。些細な賑わいも苦手っぽいし、あまりお祝いをしては殺される。
なので、今朝のうちに仕込んでくれていたシオンの特製あったかシチューにヒュリアたちが金をだしあって買ったホールケーキに「おめでとう!」のメッセージ蠟燭を刺し、ささやかながらも寮内でのお祝いになった。
わけだが、案の定というかなんというか甘いもの嫌いなシオンは一口も拒否して太る、と訴えるクィースにすでに目も当てられぬ、とか毒吐いて無理矢理食わせた。
膨れていたが食べるクィースはシオンの取り分と自分のを食べ終わって残りを全部ザラに食べてもらった。一番小さいケーキでも全部食べては本当に子豚ちゃんになるしね?
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