二十三話――端末の使い方


 シオンが携帯端末を知らないわけではない、なさそうなのであの島国の民は基本文通という情報にヒュリアがめっちゃ喰いついた。彼女はクィースをぐいぐい押しどけてシオンに迫ろうとしたがシオンはクィースを盾の代わりにヒュリアへ突き飛ばし、また思案。


 綺麗な変態を躱してシオンは端末をどうやって起動させるのか自分なりに考えているようだが、一向にわからず。なので、クィースをちょいっと軽く持ちあげてそばに寄せ、首を傾げ、どう使うのか。と無言質問。クィースはシオンの力に驚くも教えてくれた。


 クィースは手近な端末を手に取り、もう一方の手を翳した。すると間抜けな音がして端末が起動され、目を攻撃する紫が画面いっぱいにぶちまけられ、紫の上に焼き芋らしきアイコンがちょっと浮いて見えた。立体光学画像。かなりの技術力だ。


 とかなんとか思っていると、クィースがシオンに端末を渡してきた。端末はシオンの手に渡ると同時に消灯し、沈黙。だが、シオンは一応見様見真似で端末に手を翳す。


 そして、またも間抜け音。紫がぶちまけられ、焼き芋のアイコンが浮かぶ。手を翳して起動。なるほどだが、どういう仕組みだ? なんてシオンが思うと同時に説明が入る。


「端末はひとの魔力を画面のセンサーが感知して起動されるの。噂では魔力が強いひとだと指一本さっと振るだけでも起動できるらしいよ。あたしは、まあ、無理だけど」


「魔力? 法力、ではなく?」


「はい? ほーりき? なにそれ?」


「それきっとあの島国での魔力のことね! ここでは魔力って呼んでいるのよ、多分!」


「……。頭の主電源がぶっ壊れたか?」


 何気なく失礼ぶっこく女性である。ただまあわかる。こんなにも興奮したヒュリアは滅多に見られるものじゃない。なので、ドン引きしてしまうのはわかる気がする。


 でも、シオンの頭の主電源がぶっ壊れた発言はちょっといきすぎ失礼な気もする……。いや、ヒュリアが気にしていない様子なので別にいいのだが、気にするのが普通じゃ?


 そのヒュリアはシオンが構ってくれないもとい質問拒否状態なのに残念そうにし、ゼレツに質問しにいっている。シオンがそれとなく聞いていると、奇妙な質問だった。


「あの辺りも中央校対応ですか?」


「そうだよ。中央校への編入は今の時期が一番多いからな。それに移民も増えているらしいから多言語対応のものを中心に各学校への対応もばっちり備えているのばかりさ」


「学校に端末が必要なのか?」


 ここでようやくシオンが口をはさんだ。光の世界に生きる若者たちの間では娯楽品としての扱いが主になってきていた携帯端末。シオンは遊んでいる暇などなかったので除外されるも娯楽用具を学校、学びの場に持っていってしかも対応、となると使う、のか?


 ここでも常識が崩れていく気がしてならないシオンである。が、ヒュリアは心底不思議そうに「なにを当たり前のことを?」という顔でいるので、使うのだろう。多分。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る