JSからJDになっていた件について
「……という思い出が私と先輩の間にはあるわけですよ」
「ああ、そうだったな。ちゃんとあの時の記憶はある」
「すごいあやしい……私にとってはずっと忘れようがないくらいのことだったんです」
小さな文芸サークルの、椅子と歪んだ本棚しかない部室。
そこで今日も一人かと思って読書をしていると、訪ねてきたのがこの女の子だった。
「あれ、僕はあの時高一だったな、であの時君は……」
「小六です」
「なるほどそうだよな、中学受験が終わったとか言ってたもんな」
「そうです」
女の子がうなずく。
よく見ると、二回しか会ってないのに、見覚えがあるような気がする。
「今、大学一年生だよね?」
「はい」
なるほど。一浪して入った僕は今大学四年なので、これで三学年差になったということか。
「で、訊きたいんですけど、お友達はできたんですか? なんかこんなところで一人で読書してますけど」
「友達ね、まあ少しはできたよ。というよりこっちはどうして僕がここにいるとわかったのかを知りたい」
「ああ、それはですね、偶然です。顔が変わってないもんですから、すれ違った時にわかりました」
「そうか、そんなもんか」
「はい、結構詳細に覚えてるんです」
どのくらい偶然なのかはよくわからなかった。
だけど、あれから女の子が友達と楽しくやりながら、勉強も堅苦しくなく頑張って、そしてこの辺りでは偏差値がまあまあ高くて人気な大学にストレートで合格するのは、ごく自然な風に思えた。
一方の僕は、あの時女の子に少し勇気をもらい、友達付き合いを復活させた。そして友達とつるんでいくうちに成績は2位から真ん中より少し上くらいまで下がり、結果としてこの大学に入るのに一浪しなければならなかった。これももしかしたら当然の流れなのかもしれない。
そう考えれば、僕と女の子がすれ違うことは、めっちゃ奇跡というわけではなくて。
「……せっかくきてくれたし、少しここでゆっくりしていかない? まあ……雑に棚に入ってる本しかないけど」
「はい。ゆっくりしていきます」
女の子は僕の隣の椅子に座った。一番僕に近い椅子を選んだ。
「ところで先輩、お友達は少しはできたらしいですけど、彼女はできましたか?」
「ああ、そういや彼女もできると思うって言ってくれたんだっけ」
「そうですね、言いましたね」
「そうか、だけどできてないなあ」
「あららです」
女の子は笑って、そして歪んだ本棚に目をやった。
「私も、彼氏はできたことはないですね」
「そうなんだ」
「はい」
そこで、小さな部室は、沈黙になった。
僕は横にいる女の子を見る。思ったより変わってないなと思った。
まあ……もちろん胸とかは大きくはなってるけど、大人びてる度? のようなものが変わってない。
「なんかさ、久々に見たけど、全体的には小六の時のまんまだな」
「え? それ失礼ですね、私変わってますよ、ちゃんと大人っぽくなってます!」
「……そうかもな」
冷静すぎる小六から自分らしい大学一年に変わったのかもしれないと、今さら思った。
「ていうかそんな失礼なことを再会した女の子に言う時点で、ほんとに友達ができてるのかって感じですね。本についているチャタテムシが友達ではないですよね?」
「違うよ。おんなじくらい失礼なこと返してきたな」
「ちょっとあれでしたねごめんなさい」
会話はここで終わり、そして僕と女の子は目が合って、そして二人ともすごく自然に笑った。
これが、僕がなぐさめてもらった小学生の女の子との再会。
学年2位をとった僕は学年1位と付き合っている美少女に振られてしまったので可愛いJSになぐさめてもらいます つちのこうや @tunyoro
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