第4話

 管理人が退室した後、リィシアは茶器を顔に近づけた。冷茶で、花の香りがする。口に含むと、ほのかな甘みが広がった。気持ちが穏やかになる味がする。

 家出をしたのが12歳のとき。以来、心休まる日はなかったと思っていた。ようやく、少しは穏やかになれたようだ。

 ただ、懸念材料はある。リィシアは若い男性が苦手だ。養老院の住人や、管理人くらいの中年なら問題ないが、自分と同じ年代や働き盛りの男性の声を聞いたりに近寄られると、体が強張って身動きが取れなくなってしまうのだ。

 訪問予定の王族とは、誰のだろう。

 若い男性でありませんように、と願ながら、リィシアは冷茶を飲み干した。

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