第3話 君について

「いただきまーす」

「いただきます」

僕たちは今、大学の外にある人通りの少ない道にあるベンチに腰かけている。

そして女子高生お手製のサンドウィッチを頬張っていた。

手作りにしては想像以上においしかった。そして3つ目を手に取る。

その姿を見ていた彼女は嬉しそうだった。

食事を終え、一息。今度は僕から切り出した。

「単刀直入に聞くけど、最近僕のこと追い回してるだろ?」

「・・・(静かに目をそらす)」

実のところ授業時間以外にも帰り道等でも視線を感じていた。僕の第六感はごまかせない、ドヤ。

「世間一般的にこれは、スト―――」

「ぎゃぁー!やめてください!人に言われたら終わりです!!」

僕の声をかき消すように叫び、僕の口に手を当ててきた。その手をほどき、

「自覚あったのか・・・」

「あぅ・・・・・・」

「今回はこのサンドウィッチがおいしかったから、見なかったことにするから大学に入り浸ったりすんなよ?」

「だが断ります」

「なんで?」

「好きだからです!」

体を乗り出して彼女はした。こんなアグレッシブな告白は初めてだった。いや、別に告白されたことがあるわけじゃないんだけど。

「お、おう。あ、ありがと」

「ど、どどどういたまして」

顔が真っ赤になっている。感情が読み取りやすいタイプの子だった。

しばらく黙ってしまった。こういう時黙ってしまうのが一番情けないだろとアニメやドラマを見ていて感じていたが、いざその立場になってみると案外言葉が出てこない。

「あ・・・あの確かに追い回しちゃったのは申し訳ないと思ってるんですけど、でもでも、あの・・・その・・・・・・・」

「気持ちは嬉しいんだけど、さすがにストーカーとは・・・」

「そんな!わざわざ大学に通ってまで観察してたのに!」

「普通に怖いよ」

「わざわざ早起きしてサンドウィッチ作ったのに!」

「それは普通に美味かったよ」

「くっ・・・胃袋掴んでなんでも丸っと解決作戦は失敗か・・・」

「サル並みの作戦だな」

アホの子なのだろうか。

「っていうかお互い名前も知らんわけだし、無理だろ」

「だったら名前教えてください!」

「ストーカーに教えるのは自殺行為だろ」

「う・・・自分の作戦が裏目に・・・」

やっぱあほだった。

「だったら先輩のこともっと知ります!覚悟してください!今日はもう帰ります、さようなら!」

「あっ・・・ちょっと!・・・・・・行っちゃったか」


彼女は小走りに去ってしまった。最後は結構怒涛の勢いだったな。

また付きまとわれるのだろうか。そんなことを思いながら僕も帰路についた。

次の日も彼女がいつの間にか隣にいるかもしれない。しかし自分と彼女が並んで歩く姿に、僕は違和感を感じていなかった。

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no name 律水 信音 @onakahetta

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