誰かの願いを描いた作品。
- ★★★ Excellent!!!
誰もが一度は想像する、世界の終末・地球滅亡をテーマにしたお話。
自然と、「自分の想像する終末」や「自分ならどう行動するか」を思い浮かべながら読み進めて行く事になるでしょう。
このお話では、滅亡が「確定」している為、人々は諦めの中で最後の時間を過ごしています。
善悪、美醜、明暗、色々なものが混ざり合った終末の世界。
お話が描くのは、そのうちの、とてもとても小さく切り取られた「主人公の世界」だけであり、その小さな世界の中でもやはり、色々なものが混ざり合っているのだけれど、そのぐちゃぐちゃでいつ崩れてもおかしくない世界を「誰もが誰かを思って終末を過ごしている」という点が貫き、登場人物たちが見せる哀しくも明るい素振りも相まって、始終安定した静かな雰囲気に包まれています。
非日常のお話の中で軸になっているのが、日常の世界。
これもまた一つのリアリティ。
これまで ”おとぎばなし” でしかなかった「人類滅亡・終末の世界」も、思っていたよりは遠くない現実であると人類が思い知った今、そしてそういう世界の中で人々が見せた現実を人類が目の当たりにしてしまった今、この「誰かの願いを叶えようとするお話」、このお話自体が実は、作者の、私の、誰かの、「願い」なんじゃないか、と思えます。