第36話 遭難

 冬山登山なんてするんじゃなかった。

想定外の大雪で、手足の感覚は次第になくなり、何もかもがどうでも良くなったとき。

明りが見えた。テントだ。


「早く暖まりなさい」薄着の女が一人。

死ぬんだな。暖かいなあ、と眠りにおちた。

が、目覚めたら雪の反射が眩しい晴天だった。


思い出した。あれは幼い頃死んだ母さんだ。

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