第1話
王様
勇者に対する信頼度50%
勇者
仲間Aに殺害された。
勇者の仲間A
王国との関係『嫌悪』
仲間BとCからの信頼度『最低』
──────────────────
やばい、チュートリアルなんて油断してたら好き放題にやってしまった……。何とかこの状況を良い方向に戻さないと。
「そんな馬鹿な。勇者を殺すとは……一体自分は何をしたのか分かるかね」
「勇者を殺す……? え、ええええぇ!? 勇者さぁあん! 生き返って下さいいいぃ」
説明には無かったけど、変革ポイントを使った無理矢理な運命の捻じ曲げは、対象が生き物だった場合、心までは変わらない様だ。自分が勇者殺していないと思っている仲間Aの様子からして分かる。
それと変革ポイントは運命操作を行う事で1ポイント貰えるが、人間に対しては1ポイント。モンスターに対しては2ポイント。全体の関係に5ポイントと言った感じで、対象のエネルギーが大きい程、ポイントを多く使う。
現在の所持ポイントは0。チュートリアルでやった一回目の運命操作はポイント獲得に含まれて居ない。
という訳で今すべき事は、この中にいる王様、勇者の仲間A、B、Cと、兵士の運命を上手く操作しなくてはならない。
えーっと……兵士とかどんな事が出来るか見てみようか?
兵士(全員)
王様への忠誠心MAX
運命操作:
・『勇者の仲間Aの処刑を糾弾する』
・『勇者の仲間全員の追放を糾弾する』
・『全てを見て見ぬふりをする』
上二つは結局悪くなると思う。全て見て見ぬふりをしろぉ!
「むむむ……これはどうするべきか」
「王様、別にいいんじゃ無いっすかねぇ? 勇者が死んだ今、我々のやるべき事も無くなりましたし……ここで処刑しても良いですけど、国民の期待を裏切る事になりかねます」
「確かに! じゃあ、放っておくか!」
王様軽っ!
これによって勇者の仲間一行は咎められる事を逃れ、個々の持ち場へ帰った。
という所で新たなチュートリアルが開かれる。
『最初の運命操作お疲れ様でした。それでは次は、運命を操作する範囲を広げてみましょう。王の間をズームアウトしてみて下さい』
ズームアウトと言われ、スマホを使う様に二本指で見える王の間をズームアウトすると、王宮の全体と王国の全体がはっきり見える様になった。
そして、目に映り込む情報が一気に増える。
『レグノム王国』
人口:2500万人
施設:
・武具屋
・雑貨屋
・民家
・闘技場
・その他、娯楽施設
『此処の画面ではより大きな運命操作が行えます。国の政治、経済を弄ってみましょう』
政治とか経済とか分かんねえよ……。うーん、とりあえず気になる物弄ってみるか。
レグノム王国
現在運命操作は出来ません。王国全体の運命は、変革ポイントが8ポイント必要です。
うげ……。デカすぎるのは強制的に変革ポイント使う事になるのか。それなら……。
レグノム王国ー武器屋ー
王国への貢献度100%
運命操作:
・『新たな武器の開発』
・『店の増築』
・『武具の値段の増減』
なんからしいなぁ。どれ変えてもあんまり変わらないと思うけど……。とりあえず無難に武器の開発でもする?
【新たな武器の開発】
・『軍事兵器』
・『兵士専用武器』
・『一般用の武器』
……。軍事兵器とかヤバそうだなぁ。どれだけ細かく操作出来るんだ?
【軍事兵器】
・『脅威度の上昇』
・『防衛力の上昇』
・『全体戦力の上昇』
うーん。今上げるべきでは無いんだろうけど……脅威度上げちまえ!
『レグノム王国武具屋にて兵器開発により脅威度が上昇します。貢献度が100%な為、より大きな結果が生まれるでしょう』
《貢献度100%以上で効果上昇》
『武具屋が軍事兵器を開発しました。レグノム王国の他国に対する脅威度が100%上昇しました。これにより、【情報不足】との関係が『緊迫』になりました。
あ……、見た事が無い名前は表示されないんだな。何処との関係が悪くなったんだろう……。
っておいおい、元に戻そうと思ったのに興味本位で改悪してんじゃねーよ。あー、どうする?政治なんてやった事無いし……うーん。そうだ!勇者は殺されたけど、先ずは勇者を殺してしまった仲間達の様子を確認しよう!
俺は勇者の仲間の家を検索し、問題の仲間Aの家の中を覗く。
「あぁ、どうしよう……僕が? なんで? これからどうすれば良いんだ……。何故か王国は僕を見て見ぬふりをした。一体何が起こってるんだ!?」
変革ポイントで無理矢理起こしたイベントはどうやら対象人物の人格さえも一時的に捻じ曲げる事が分かった。自分が勇者を殺した事を未だに信じられず、気が動転しているこの人がそれを証明している。
恐らくこの状態のAを動かしても更に不自然がられるだけだ。BとCを動かすべきかな?
俺はAを一旦後にして、最初にBの家の中を覗いた。
「なんでアイツ……あんな事をしたんだ? 殺した後、まるで記憶が無いフリをしていたけど、アイツはどうにかしてる! クソッ……なんで新たな冒険って時にこんな事が起こるんだ!」
どうやらBはAの事を良く知っているようだ。勇者を殺した直後の反応に少なからず違和感を覚えているようで、Aに対してどう接せれば良いのか頭を悩ませている様に見える。
っていうかこれ、フツーに悩み解決じゃん。運命操作に何か良い項目が有れば良いんだけど……。
勇者の仲間B
Aに対する信頼度:0%
気分:戸惑い
Aとの関係:親友
運命操作:
・『Aを王の前に連れ出し、処罰の軽減を申し出る』
・『Aと一緒に国を出る』
・『Aを連れ出さずに寄り添う事を決める』
【変革対象外】
あれ、変革対象外ってなんだ?普通の運命操作だけで大きく変わるからこれ以上変革は出来ないって事?まぁ、あとから分かるか。
チュートリアルの流れから分かった事で、運命操作させた後の結果を更に曲げる事は出来ない。つまり、今回の様に。
運命操作→結果→運命操作という様に繰り返すだけであって、結果を元に変える事は出来るが、悪い結果となった場合、周囲の信頼度が変動し、またその信頼度によって運命操作の選択肢が変わるので、悪い結果を直ぐに良い方向へ戻す事はとても難しくなる。
またどうしてか分からないが、ここぞという時に使えると思っていた運命変革は、必ず全ての状況で使える訳では無いという事。考えられる理由は、『運命操作の時点で結果か大きく変わる』か、『辻褄が合わなくなるほどの大変革は不可能』の二つだろう。
だーかーらー、1番目の選択肢は駄目だ。兵士の動きを見て見ぬフリにさせた所で、恐らく効果は一時的。王への忠誠度100%の兵士があんなフリはどうみても不自然過ぎるだろ。
3番目の選択肢も、1番と同じ理由だ。勇者を殺した人間なんだぜ?いつか絶対絶命の危機に陥ったら運命操作でも結果は変わらないなんてあったら嫌だ。なので、もっとも安全策だろうと思うのは2番目だ。
「もうどうなっても良い……弱いモンスターにさえもビビりまくるアイツが勇者なんて殺せる訳が無いだろ? きっと何かに操られていたんだ。だがそんな理由は勇者を殺した罪に対して言い訳にかならない! 逃げよう……Cは分かってくれるだろうか……」
Bか行動に移った所で、俺の目の前をいつもの結果報告では無く新しいチュートリアルメッセージが浮き出る。
『運命操作とは、対象の行動や状況の行く末を自らの手で決める事が出来ます。ただし、決定的な選択肢では無く、問題がそれ以上にある場合は、一度の選択では変動しません。運命操作の選択肢は、状況に応じて人物なら信頼度や関係、性格によって様々に変わります。全てを都合良く済ませるには変革スイッチが最もですが、人物の行動原理を捻じ曲げたり、変化後の結果が多くの問題を一斉に曲げる場合は、変革ポイントが多量に必要となり不足していると自動的に対象外と表示されます』
そういう事だったのか。つまり、Aの人格を捻じ曲げる事に変革ポイントが必要だったという様に、変革スイッチでなければ変えられない物が一つの変革スイッチで多くを変えてしまう場合は、一括でそのポイントを要求される。という事だろう。
すげー簡単でこれからもっと面白くなるだろうなぁと思ってたら、意外と制限が複雑で難しいいいぃ!
おいおい、異世界転生したら、異世界の管理者って……そんなの聞いた事無いぜ。
というメッセージが終わった俺は、Cの様子を見に行く。
「はぁ……。なんで、こんな事に……」
とてつも無く落ち込んでいる。王の間では良く見なかったけど、女性のようだ。BはAを連れ出す事を決意したが、Cもまた怒りでは無く戸惑っている。
そういや、逆に運命操作をせずにBの行動を待った場合どうなるんだ?
俺はBがAを連れ出そうと決意した所をCの運命操作をせずにBの行動を見守る事にした。
BはAの家に行く。
「A! 逃げるぞ。こんな所にいちゃあ、何れお前は殺される」
「逃げるって何処に……。逃げたら逃げたで、指名手配されちゃうよ。逃げられる場所なんて無い……」
「俺はお前の事、今までどんだけ支えて来たと思ってんだ! いくらモンスターと戦えなくても、いくらお前がビビリでもいつまでも見放さずにやってきただろ! いいから行くぞ!」
「うん……」
Bは、Aを家から連れ出すと、Cの元へ向かった。
「C、この国から逃げようぜ」
「B……。Aもいるんだね。分かった逃げよう」
『運命が変動しました。勇者の仲間だったA、B、Cのお互いの信頼度がMAXになりました。CPを1獲得しました』
──────────────────
レグリム王国
脅威度:100%
勇者:死亡
勇者の仲間:お互いの信頼度100%
・A
・B
・C
変革ポイント:2
Chapter1『潰えた夢』完了
World Operation Leiren Storathijs @LeirenStorathijs
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