World Operation

Leiren Storathijs

プロローグ

 俺の名前は、世界せかい わたる


 俺はある日、太陽の陽がカーテンの隙間から差し込む自室のベッドから、上半身を起こした瞬間、家が木っ端微塵に爆散。即死だった。


 そしてハッと目を覚ますと、目の前に王様と勇者とその仲間が居た。正しくは、各人の頭上に、名前ではなく役職が透明の窓となって表示されている。


 いや厳密には、役職を持つ人々を三人称視点、斜め上から覗いている。


 てか此処は何処? そう考えていると……俺の視界を全面遮る程の大きな窓にこう文字が浮き出る。


『異世界へようこそ! 貴方は異世界の管理人として選ばれました。画面右上にあるOperation Modeで世界を稼働させて下さい。この世界は、貴方の判断で全ての運命が変動します』


 は???


 あまりの突然の事に理解が追いつかない。異世界はなんとなく分かるけど、管理人? 世界を稼働? 運命が変動? 色々な疑問が浮かんで来るが、幾ら念じてもこれ以上教えてくれない様だ。教わるより慣れろってか。


 俺は良く分からないまま、指示通りに『Operation Mode』を開く。その中に『世界を稼働させる』というボタンが有ったので、恐る恐るそれを押す。


 すると、文字通り世界が動き出す。


「勇者よ、良くぞ我々王国に参った! さぁ、名乗れよ」

「俺の名は、桐ヶ谷真人」

「では、勇者桐ヶ谷よ。早速だがステータスと唱えろ。さすればお主の身体能力が分かるだろう」


 この展開って、良くある異世界転生ってやつだろ。そうあるあるに鼻で笑うと、また視界の中央に文字が浮き出る。


『貴方がこのモードで出来る事は、これから先に起こる運命の操作です。しかし、その運命を操作した事による先の運命がどうなるかは分かりません。先ずは簡単に勇者のステータスを大雑把に設定してみましょう』


 すると三つの選択肢が見える。


【勇者のステータスを決める】

・『貧弱』

・『普通』

・『屈強』


 俺はなんとなく、『普通』を選択した。すると、また世界は動き出す。


「ステータス」


桐ヶ谷真人

Lv 6


体力:D+

攻撃:B

防御:C

魔力:C-

敏捷:D

幸運:D-


スキル:

・勇者の力(未解放)


「普通だな……」

「……おっほん。まぁ、こういう時もあるじゃろ。訓練すれば何とかなる!」


 うわぁ、期待以下。勇者と王様の間が気まずい……ッ!


『運命が変動しました。勇者のステータスを『普通』を選んだ事により、仲間と王様の勇者に対する信頼度が50%低下しました。これにより新たな選択肢が解放されます。次は今の運命操作に則り、気になる役職を選択し、次の運命を操作して下さい』


 50%ってかなりでかいなおい……。気になる役職? とりあえず王様選んでみるか。


王様

勇者に対する信頼度:50%

気分:『不安』


操作出来る運命:

・『不安なので勇者追放』

・『不安だけど、訓練を始める』

・『何もしない』


 何もしないって何!? これから訓練やるって言ったよね? なのに何もしないの? 俺は気になるので『何もしない』を選択する。


「……」

「あれ? 王様? 訓練はどうすれば……」

「……」


 王様本当に無言になっちゃったよ!? 大丈夫なのかなこれ……。


『運命が変動しました。勇者の王様に対する信頼度が20%低下しました』


 いやいやいや、待てよ。あーもう良いや。多分これがチュートリアルなんだろ? きっと。とりあえず自由にやってみるか……。


 俺は、次に勇者の仲間を選択する。


勇者の仲間A

勇者に対する信頼度50%

気分:『普通』


運命操作:

・『面倒なので勇者を裏切る』

・『勇者に嫌々従う』

・『どこかへ移動する』


 さっき信頼度が下がった事で新たな選択肢が解放とか言っでたけど、もしこの選択肢が信頼度に関わっているのなら……ロクな選択肢ねぇな……。


 そう次の選択肢を選ぼうとすると、文字がそれを遮るように浮き出る。


『運命を変動させた事で、変革ポイントを取得しました。1ポイントにつき、運命を無理矢理歪ませます。早速『勇者の仲間A』に使ってみましょう』


『変革ポイントは、各人物、環境、時間等、様々な場所で使用出来ます。また、変革ポイントを使用する場所毎に何を歪ませるか決められているのでじっくり考えて使いましょう』


 と、言われたので勇者の仲間Aに変革ポイントを使う。すると……。


勇者の仲間A

勇者に対する信頼度50%


運命操作:

・『面倒なので勇者を裏切る』

・『勇者に嫌々従う』

・『どこかへ移動する』


【変革スイッチ】

・《悪の選択肢を追加》


・《信頼度をMAXまで上げる》

(一部の選択肢が削除され、新しい選択肢が表示されます)


・《信頼度を最低まで下げる》

(新しい選択肢が追加されます)


 悪の選択肢……? 他二つは分かるけど……気になる! 押しちゃえ!


 俺は変革スイッチ《悪の選択肢を追加》を押した。すると、まさに悪の選択肢が追加された。


運命操作:

・『面倒なので勇者を裏切る』

・『勇者に嫌々従う』

・『どこかへ移動する』

・『勇者を殺す』


 うわああああ!? それ本当にやって良いのか? いや、どうせチュートリアルだし……へへっ。俺は、好奇心で選択肢を選んだ。


「……」

「王様! どうしちまったんだよ! 何とか言ってくれ!」

「……」

「勇者。お前は普通だ。僕たちは君について行く理由は無くなった」


 勇者は仲間の言動に首を傾げながら怪訝な目を向ける。


「だから僕は君を殺す。お疲れ様、また新しい世界で会おう……」

「は? 何を言ってッ───」


 その瞬間、勇者の仲間は、勇者の喉を容赦なく腰から引き抜くダガーで掻き切る。


「あ"っ……な、なんで……?」

「……。あれ? 僕何してるんだろう?」


『運命が変動しました。勇者が死亡。勇者の仲間Aに対する王国の関係が『険悪』に変化。勇者の仲間BとCのAに対する信頼度が最低まで下がりました』


『変革ポイントの使用はこの様に、大きく運命を変動させる事があります。歪ませに歪ませるので、取り返しが付かないという事は起きませんが、変革ポイントの使い方次第では世界を混沌。又は、貴方の好みに変えられるでしょう。これよりチュートリアルを終了します。状況はこのまま継続されます。自由に世界を操作しましょう』


 こうして俺の世界操作が始まった。きっとやれる事は此処から増えて行くのだろう。先ずはこの状況を回復させたい……。

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