第3話 食べ方と営み

「食べ方で分かる?」


 とあるプロジェクトの打ち上げ会場。結構大きな企画が終わったことによる開放感か酒が進む者が多い中、たまたま席が近くだった別部署の人間がこんなことを言い出した。


「そう、その人の食べ方でセックスの仕方が分かるらしいぜ」

「えぇぇ!凄いですね!」


 その男性社員の話し相手は三雲である。女性社員にそんな話題を振るそいつの品性を疑ったが、何にでも真っ直ぐな三雲は食い付きがよいためなんとか場の空気は和やかなままをキープしていた。


「汚い食べ方の人はその通り雑だし、逆に綺麗に食べる人はめちゃくちゃ気持ちいいとか」


 ちなみに僕はと言うとそんな話を真横で聞き流しつつもうすぐ無くなりそうなホッケの開きをつついている。


「へぇー面白いですね!」

「そういう三雲ちゃんの食べか…グギャ!」

「あ、ごめんね」

「ヒェ…あ、ちょっと俺あっちの方行ってきマース!」


 とりあえず、人の後輩を目の前でセクハラしようとする馬鹿の足を思い切り蹴りあげた。そいつは流石にセクハラの自覚はあったようで目があった後しっかりと睨みつけてやると肩を震わせて立ち去ってくれた。


「あれ…何を話そうとしてたんだろ?」

「三雲さん、あんまり深追いしなくていいよ」

「あ、金村さん!」

「気づいてなかったの?!」


 どうやら僕をたった今認識したらしい。最初の方から人一人挟んでいたのに…


「そうだ、面白い話聞いたんです!人の食べか…」

「それ以上は言わないでおこうか」


 ついさっき手に入れた情報を嬉嬉として話そうとする彼女をなんとか止める。このまま自分までセクハラをされては堪らない。


「えーなんでですか!」

「それは…」


 話題のやり場に困って周りを見渡す。何か面白いものでもあれば彼女の気をセクハラまがいのものから遠ざけれるだろうだろう。


(…あ)


 端の方を見た時に、あの同僚が何人かの同僚に混ざって談笑しているのが目に入った。その手元にはそれは綺麗に食べ終えられた皿が残っている。


「綺麗な人は…か」


 確かに彼の営みは優しそうだなぁ。というかそれを超えてねちっこそう。極限まで言葉と少しの愛撫だけで焦らしてあの手で大切なところを触れられる頃には…


「うわぁぁぁ!」


 ここまで考えて無理やり意識を戻す。僕は今何を考えていた?確かにあのような話を聞いたとだからとはいえ…。


「金村さん大丈夫ですか?!」


 突然大声を出した僕を心配してか三雲が焦ったように僕の肩を激しく揺する。それはもう食べたものが戻りそうなくらいに。


「三雲さ…ちょ…吐いちゃう…」


 その後、しっかりとリバースしてしまいあろう事か佐藤さんに介抱されたのはまた別のお話…。



(暗転)

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類は友を呼ぶ。ー佐藤と金村編ー めがねのひと @megane_book

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