この物語を読み始めて、すぐにある違和感に気付きます。
「うん? 書き損じかな?」
と、考えてしまう部分があるんですね。しかし先に進めてみると、実は書き損じでは無く、そこに“ある”キャラクターの思惑がしっかりと現れていることに気付かされます。
つまり主人公・佐藤の一人称で描かれる物語であると同時に、周囲のキャラクター達もしっかりと、間接的でありながら、しっかり描写されている。
これは佐藤が忘れてしまった「約束」が物語の重要なパーツであるという本作においてこれ程、強力な武器となる構成力では無いでしょうか?
しっかりとラブコメでありながら、実は推理小説じみた「謎の掲示」から「謎の開示」というカタルシスさえ味わうことが出来ます。
ぶっちゃけて言ってしまうと「なんてお得な!」と思わず唸ってしまいますw
そして大事な事。
こんなレビューを書いてしまう私が、何ら引っかかりも無くスラスラと読むことが出来ました。これもまた“繊細さ”の証明と言えるでしょう。