第15話 誤射からの自爆だって? ま、何故か無敵の一般人には気を付けろよ
マーカスのおっさんからの依頼も一段落つき。
現在俺達はダンガロール山脈第二のリトルダンジョン、大鎌の食物庫に突入していた。
「ムミュ!! さっそく現れましたネ! 悪しき怪獣ヨ! 食らいなさい。 必殺! ボロニャビィィィィィム!! 」
子供のごっこ遊びのような、やけに芝居がかった台詞とともに。
ボロニャの尻尾からちゅんちゅんとビームが放たれる。
発射音こそ小鳥の囀りにも似て可愛らしいが、その実態はえげつない貫通力をもってして敵を撃ち抜いていく恐ろしい攻撃だ。
今しがた会敵した、昆虫種の魔物である
その名の通り、盾のように硬い羽根を用いて迫りくるボロニャビームを防ごうと試みたが。
ジュッ!
という肉が焼け焦げるような音と共に、羽根ごとその身を撃ち抜かれてしまった。
「ふっふーん! どんなもんだーいデス! この程度の相手、ボロニャ様の敵ではないのデスヨ! 」
と、後ろからご機嫌なボロニャの声が聞こえる。
ボロニャいわく、ビームという技を使う最適距離は中~遠距離らしいので俺達のパーティの構成上今は最後尾についてもらっている。
あの威力から考えるに、誤って味方にビームが当たってしてしまったら大惨事だが。
安全装置というパロマシーンに搭載された機能により、味方への誤射は100パーセントありえないので安心して欲しいとの事だ。
ボロニャがものすごい早口で説明してくれた安全装置とやらの仕組みは全く理解することが出来なかったが。
実際に俺に向かってビームの発射口である尻尾を向けると、尻尾の先端部に×印の魔法陣のようなものが浮かび上がりビームが打てなくなっていたので誤射は無いという話は本当だと思う。
(予想外の流れだったとはいえ、ボロニャは俺達の仲間になってくれたわけだし。 あんまりアイツの話を疑うのも悪いよな)
「皆サン! 見てましたカ!? 悪しき怪獣を秒・殺! まさに超高性能パロマシーンの名に恥じない活躍ぶりデス。 ミュミュミュ」
「ボロニャちゃんのビーム。 やっ、やっぱり凄いです…! 」
「ニュフフ! もっと褒めてもいいのデスよ」
ボロニャのいうパロマシーンというのが、ゴーレムとは違うのだという事は何となく理解しているが。
ネルミに褒められ頭部の猫耳を嬉しそうにピョコピョコと動かしている様子をみるに、彼女には褒められた事を嬉しいと思うような感情があるように思えてくる。
発している言葉も心を感じさせない棒読みではなく、可愛らしい女性のような声で喜怒哀楽もしっかり伝わってくる。
言動や声の特徴から彼女と表現したが、そもそもパロマシーンとやらに性別があるかは謎のままだ。
(まっ、付き合っていけばそのうち。 ボロニャについても色々と分かってくるか)
「ムミョ!? ご、ご主人サマ! アレを見るデス! せっかくボロニャが倒した怪獣が地面に沈んでいくのデスよ…!! 」
「ん? ああ、そうだな」
「あ、あの…ジルさん。 あんまり驚いていないみたいですが…その、ダンジョン内で倒した魔物が消滅せずに、地面に沈んでいくのは。 け、結構異常な事態なのでは…」
「あー、そうか。 初めて見たら驚くよな、ふつう。 今のはこのダンジョンの
「ミュ? 」
「ギミック…です? 」
「おう」
(そうだな…)
ボロニャも加わった今の戦力でこのリトルダンジョンに挑むなら、ギミックについて知らなくても特に問題ないが。
一応ここのギミックはダンジョンの
「とりあえずセーフゾーンまで進んじまおうぜ。 到着したらギミックについて、軽く授業を開くとするか」
「は、はい! 了解です、ジル先生っ」
「ミュイ! ボロニャもご主人サマの一生徒として学習に励むのデスよ! 」
「おお。 二人ともやる気だな」
「~~! 」
「あっ。 ライリーちゃんもやる気満々みたいですっ」
ネルミの言葉に、そうだそうだと頷いてみせるライリーもどうやらダンジョンのギミックには興味があるようだ。
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