【その男、「ウソツキ」】⑩

 要が、一つ目の事件について話し終える。

「“これが、二年前にやった賭けの全部だよ。その時の傷は僕の友達に治してもらってね。一つも残ってないよ”」

 要がそう言うと、

「その通りでございます。一つも嘘は言っておりません」

 と要の横に立つ少女……風見りんがそう付け加えた。

「“僕の能力っていうのは、あくまで『僕がどう見えているか』っていう情報を調整するものだ。僕の指紋や足跡なんかは消せるんだけど、自分の手から離れた物はどうにもできない。だから、最初に現場から見つかった『大量の小さな黒い玉のような物』だけは残ってたっていうわけ”」

 要は、上着のポケットから赤い電池のようなものを取り出して見せる。

「“散弾銃っていうのは、小さな弾丸がたくさん入ってるんだ。それが飛び散って相手に当たる。現場に残ってたのはこの銃の弾丸だんがんだよ。

 疑うならもう一回現場の写真でも見ればいい。もう今は、ちゃんと全部を見えるようにしてるから”」

「……」

 要の言葉に、小夜は相槌も頷きもしなかった。

「“じゃあ次は……去年の話かな。あの時も死ぬかと思ったね”」

 と言って、要は次の事件について話し始める。

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