いつか貴方と……。

幻想的なラストシーンはまるで映画のワンシーンのようだった。思わず、抱きしめたくなるようないじらしさを感じさせる。あるいは、二人の隔てる微妙な距離感が、この作品にハッとさせる美しさを添えているのかもしれない。

海よりも深い愛情。貴方となら深い海の底でも一緒にいたい……。

脳裏をよぎるのは美しい人魚となって大洋を遊ぶ無邪気な二人の恋人の姿。詩的な情緒に包まれながら二人は泡沫と共に戯れるのだ。幻想的な愛の物語を予感させる。

英数字を積極的に取り入れているが、穏やかに凪ぐ海洋には漢数字の厳格さは必要ないのだろう。柔らかな筆致で切ない愛の一コマを切り取った作品だと感じた。