サンタクロースが眠りにつく朝

@smile_cheese

サンタクロースが眠りにつく朝

みなさんはサンタクロースをいつまで信じていましたか?

え?今でも信じているって?

それはとても素敵なことですね。

そんなんです。サンタクロースは本当に実在するんです。

ここにいるみなさんには特別にその正体をお教えします。

知りたくない方は耳を塞いでくださいね。


なんと、私のお父さんがサンタクロースなんです。

え?そんなことは分かってる?

みんながそうだって?違うんです。

サンタクロースの正体がみんなのお父さんだったということではなく、私のお父さんの正体がサンタクロースだったというお話です。

このお話は私にとって10回目のクリスマスまで遡ります。


10歳の私はサンタクロースという存在に疑問を持ち始めていた頃でした。

周りのお友だちも信じている人と信じていない人がちょうど半分くらいになっていて、まだ信じていたかった私はみんなの声が聞こえないように耳を塞いでいました。

サンタクロースはいる。絶対にいるんだから。

そう自分に言い聞かせている内に、気がつくと10回目のクリスマスイヴがやって来たのでした。

夜になると私はベッドに靴下をぶら下げて、眠る準備に入りました。

けれど、サンタクロースのことが気になってなかなか眠りにつけません。

サンタクロースはいる。絶対にいるんだから。

そうだ、この目で確かめればいいんだ。

私は迫りくる眠気と戦いながら、サンタクロースが来るのを待ちました。

そして、とうとうその時がやって来たのです。

日付が変わり町が静まり返った頃、部屋の扉がゆっくりと開いたのです。

私はドキドキしながら寝たふりを続けました。

すると、耳元でガサガサと何やら音がするのです。

これは、サンタクロースが靴下にプレゼントを入れている音に違いない。

そう確信した私は寝たふりを止めて、ゆっくりと目を開きました。

真っ赤な帽子とお洋服、そして、白く長い髭を蓄えたその姿は私のイメージ通りのサンタクロースでした。

私は嬉しくなってパッと起き上がるとサンタクロースの顔を覗き込みました。

サンタクロースは目を真ん丸にして驚いていました。

けれど、それ以上に驚いたのは私でした。


その顔は私のよく知っている顔でした。

毎日、顔を会わせている馴染みのある顔。

そう、そこに居たのは私のお父さんだったんです。

私は落胆しました。

サンタクロースはいなかったんだ。

やっぱりサンタクロースの正体はお父さんなんだ。

お父さんがサンタクロースのふりをしてプレゼントを置いていたんだ。

私は一気に悲しい気持ちになり泣き出してしまいました。

お父さんは慌てて私を抱きしめました。


「バレてしまったね」


やめて。


「紗理菜、お父さんはサンタクロースなんだ」


聞きたくない。

私は耳を塞ぎました。

そんな私を見て、お父さんはさらに強く私を抱きしめました。


「よし、良いものを見せてあげよう」


そう言うと、お父さんは私を抱えたまま外に連れていきました。

外では雪が降り始めていました。

お父さんは私に優しく微笑みかけると、首に掛けていた小さな笛を吹きました。

すると、空からシャンシャンシャンと鈴の鳴る音が聞こえてきたのです。

私は音のする方を見上げて驚きました。

なんと空からトナカイがソリを引いてやって来たのです。

お父さんは先頭にいる真っ赤なお鼻のトナカイをそっと撫でました。


「じゃあ、行こうか」


「え?行こうって、こんな真夜中にどこへ?」


お父さんは私をソリに乗せました。

ソリには大きな袋がたくさん積んでありました。


「もちろん、プレゼントを配りにだよ」


そう言うと、お父さんは思いきり手綱を引きました。

すると、トナカイたちは一斉に走りだし、少しずつ空に向かって浮かび上がっていったのです。

私はまるで夢でも見ているような気分でした。

あの日、ソリから見下ろした町の景色を私は一生忘れないでしょう。

それから、お父さんは次から次へと町の子供たちのためにプレゼントを配って回りました。

私の目にはお父さんの背中がいつも以上に大きく映りました。


お父さんの正体はサンタクロースでした。

サンタクロースのふりではなく、本物のサンタクロースです。


プレゼントを全て配り終えて家に着く頃には、太陽が顔を覗かせる時間になっていました。

それはつまり、サンタクロースがようやく眠りにつくことのできる時間が来たということ。

お父さんは眠る前に一杯のココアを用意してくれました。

プレゼントを配り終えた朝は毎年こうやって温かいココアを飲んでから眠りについているそうです。

体が温まった私たちは同じベッドで寄り添いながら深い眠りにつきました。

私は次のクリスマスからココアを作りながらサンタクロースの帰りを待つようになりました。

サンタクロースがぐっすり眠りにつけるように。


どうですか?

サンタクロースはいるって信じてもらえましたか?

え?そんなのは作り話だって?

いいえ、作り話なんかじゃありません。

これは本当に本当の話なんです。

そして、あなたにも関係のある話かもしれません。

だって、サンタクロースは世界中にいるんですから。



完。

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