第18話 4人の嫁

「萌、もう1回言ってくれ、何を出したって」

「結婚届よ。あなた」

「……」


 何してくれてんだーーーー。終わった。もうおしまいだ。ごめんよ。未来の奥さん、俺は萌の旦那になってしまったよ。



「どうしたの。お兄ちゃん。嬉しすぎて声がでないのかな? 『結婚して―』って言ったもんね」

「無効だ。こんなの無効だ。俺は許可していない。勝手に出した結婚届なんて受理されるはずがない」

「お兄ちゃんは私じゃ不満なの? 何でもしてあげるよ」

 な、なんでもだと……。ゴクリ。

「あ、そうだ。忘れてた。ちなみにケイトとアリシアの分も一緒に出しといたから」


 母さん、ごめんなさい。俺が異世界に行っている間に萌はおかしい子に育ってしまいました。俺がいなかったせいで。親父、どんな育え方しやがったんだ。


「あなた、よかったわね。いっきに3人も奥さんができたわよ。ハーレムね。男の夢でしょ」

夢だけど、夢なんだけど、何か違う。俺の意志が入ってないぞ。


「こっちの世界では奥さんで、日本では妹ということで、よろしくね。あなた」


 萌から衝撃の事実を叩きつけられて、俺は呆然としたまま、異世界を彷徨っていた。

 一体、何故こうなった。どこで間違えてしまったのだろうか。嫌な訳ではないんだ。ケイトとアリシアは共に戦った仲間で、萌に至っては妹だ。そんな目で見ていなかった3人が急に奥さんだなんて、何か違うだろ。俺の思い描いていた新婚生活がガラガラと音をたてて崩れさった。俺の新婚生活はあの3人に搾取される日々になるのではないだろうか。


「ふははは、勇者よ久しぶりだな」

「……」

「おい、無視をするでない。わざわざ出向いてやったというのに」

「何の用だ」

「いや、何、復活したから驚かせようと思ったんだが、取込中か?」

「ああ、人生について模索中だ」

「そうか、出直すか」

「いや、待ってくれ。この際お前でいい。相談にのってくれ」



「そうか、勇者のお前も大変な目にあってるんだな。儂もな、奥さんが5人もいるから分かるぞ。その気持ち」

「分かってくれるか。魔王よ」

 昔の敵は今日の友。かつて殺しあった魔王との思わぬ会合に少し救われた気がしたのだった。

「まあ、先輩としてアドバイスするとしたら、皆、平等に愛することじゃな。ちょっとでも差をつけてみろ。酷い事になるからな。気をつけろよ」

「はい、先輩。肝に命じます」

「あと、やりすぎ注意じゃ。1日2発までにしておけ。次の日が辛くなるぞ」

「はい」

「それじゃあの。達者で暮らせよ」

「はい。先輩もお体にお気をつけて、やり過ぎに気をつけてください」


 魔王先輩と別れ、事務所へ戻った俺は三人と今後の話をするために、萌を探していた。

「ああ、ここにいたのか。シュウ、大変じゃ。お主の結婚を知ったプリシアが騎士団総動員でここに攻めて来ておるぞ」

 あー。次はプリシアだと。あの姫さん、何を考えてるんだ。


「お兄様、結婚したってどういう事ですか!」

「それは、俺の意志じゃなくてだな」

「お兄様は私と結婚するんですよ」

「お前にはジェイクがいるだろうが……」

「嫌です、あんな暑苦しい男。私はお兄様以外とは結婚いたしませんわ。お父様も勇者様との結婚であれば認めて頂いております」

 王様、認めないでください。俺では手に余ります。

「だとしても、俺にはすでに3人も奥さんがいるから、お前との結婚は無理だ」

「いえ、別に私たちは何人増えようと構いませんよ」

「そうね」

「別にかまわんぞ」

 待って、話をややこしくしないで。

「じゃあ、私も奥さんになります」

「「「いいわよー」」」

 待って、俺の意志はーーーー。


 プリシアは結婚届を持って、王都へ帰って行った。王都の教会に提出するそうだ。1日で4人も奥さんが出来てしまった。


 俺の未来はどうなってしまうのだろう。魔王先輩、助けてください。


Fin


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すみません。回収していない伏線とかいっぱいあったのですが、

編集長より打ち切りの連絡がありまして、急きょ完結させていただきました。


 初めての異世界分野の壁は厚かったです。再度チャレンジしていきますので、これからも応援していただける助かります。

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異世界を観光してみませんか〜元勇者は妹と元仲間と観光客に振り回される〜 間宮翔(Mamiya Kakeru) @KUMORINOTIAME

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