第41話 ドールとガイルさんは似た者同士

 激戦を見せたカインたちと違い、次に行われた僕と生徒会所属であるユグリットとの試合は一瞬で決着がついた。

 大剣使いであるユグリットは、スタートと同時に間髪入れずに距離を詰めてきたが、それをカウンターで顔面に拳をお見舞いして終わりというのんともあっけない終わり方だった。


 これには会場も騒然としていた。

 まぁ、正直ユグリットには申し訳ないがあまり興味がなかったのだ。

 これで次に対戦するのはカインになる。


「少しは君に近づいたかなって思ってたのになぁ、まだまだ遠かったよ」

「そりゃ、ぼく最強だからね」

「その自信が羨ましくて仕方がないよ」

「まぁでも、ぼく以外にも余裕がありそうなやつはいそうだけど?」


「勝者! リヴェル・フォン・ローファウトォォォォオ!!」


「ふん、準備運動にもならん」


 大歓声に囲まれるリヴェルは、すでに次の試合のことについて考えていた。

 なにせ次に出てくるのは、あのアリエルすらも認めたという天才、Cクラスのロイが相手なのだ。


「順当に上がってきているな」


 試合が終わり、控え室へ戻るとそこにはネオンがいた。


「……お疲れ様でした」


「ああ。それよりネアン、今までどこに隠れていた?」


 ここ数日、まるで避けているかのように会うことがなかったのに、急にリヴェルの前に現れたネアンの顔には少し影がさしていた。


「……いえ、少し体調が優れなかっただけです」


「連絡の手紙くらいよこしてもよかっただろ。急に消えられると深読みしそうになる」


「……申し訳ありません」


「……ふん、今日はもう帰って休め。おい、そこにいるお前、今すぐ人を呼んでこいつを帰らせろ」


「いえ、自分で歩けますので」


 そういってネオンは控え室を出る。

 一人歩きながら顔をしかめ、つぶやく。


「……なにをやっているんだ。リヴェル様に心配をかけさせて、くそ!」


 ドン、と廊下の壁を殴ると鈍い音が響く。

 すると曲がり角から今一番出会いたくないであろう人物、ノエル・フォン・エレクトスが歩いてくる。


「ッ!? ……兄さん」


「……なんだその顔は」


「い、言われた通り、試合には出ずに大人しくしています……。こういうことを、望んでいるんですよね……?」


 その次の瞬間には、恐ろしいほどに純粋な殺意と無数の鋭利な氷が喉元に突き立てられていた。


「お前はなぜそのように俺をイラだたせる。たしかにおれはひっこんでいろといつも言っている。この言葉に従うのならまず学園に入るべきではなかっただろうが。そのくせ、Sクラスに入ったというのにも関わらず、本戦にすら出てこない。お前はエレクトスの名をいくら汚せば気が済むんだ?」


「……」


「実の兄にすらその怯えようならばこの先この学園で生きていけると思うな」


 言うだけ言って通り過ぎていく兄の姿を見ることなく、ただ俯くことしかできなかったネアンは、拳を握りながら自分も帰路についた。


 曲がり角からその話を盗み聞きしていたエルの顔は、まるでそうなることを知っていたかのように微笑んでいた。


「そろそろ、かな」


 そうして、妙に不気味に見えた夜の帳は静かに下りていく。





◇ ◇ ◇





「さぁ、だんだんと終わりが近づいていく学内交流戦! 引き続き準々決勝進出をかけた戦いが今また、始まろうとしています!」


 実況者の盛り上げにつられるように、観客席の熱がまたあがる。本当に優秀な実況者だ。時間が空けば、上がりきった熱は冷め、落ち着きを取り戻す。

 そんな中で、再度ここまで盛り上げられる手腕には素直に拍手を贈りたくなる。

 この試合の選手紹介と同時に、知った顔が入ってきた。


「うわぁ、勝ち上がっていく度に歓声がすごいことになってく! これにはさすがのあたしもテンション上がっちゃうよ!」

「ただ暑っ苦しいだけだと思うんだけど……、それに、決勝までいっちゃえばこんなの比じゃないわよ? まぁ、悪い気はしないけどね」

「ハイネとクリステラか……!」


 栗色で短めのポニーテールから聞こえてくる天真爛漫な明るい声と綺麗な黒髪ロングをもった気だるげな声が耳に届く。


「さぁて、どっちが勝つだろうね」

「実力で言えばハイネの方が上かな」

「だけど意外性で言えばクリステラも負けてない」

「なんたって、この俺を負かした相手だからな!」

「ドール!」


 なかなか姿をみなかったドールも好きな女の試合は見に来るようだ。


「もう調整はすんだのか?」

「……エルにゃバレてたか」

「何年の付き合いと思ってるんだ。それぐらいお見通しだよ」

「ごめん、何の話なんだい?」


 それは、ノエルとローズの試合が終わったあとに遡る。





◇ ◇ ◇





 ノエルのあまりに屈辱的な態度をみたドールは、本気で勝ちに行くための準備にとりかかった。


「つってもどうするかなー、あのクソ野郎をぶん殴るにはどうしたらいんだ?」


 ドールの頭の中では、どの接近方法でも全て氷漬けにされているイメージしか湧かなかった。


「んなとこでシケたツラしたガキはどこのどいつだぁー?」

「げ、父ちゃん!?」


 豪快な歩き方とともに声をかけてきたドールの父親であるガリアはそのままドールの頭を荒々しくなでる。


「ちょ、やめろよ父ちゃん!」

「ガッハッハッ、順調に勝ち進んでおるな! 感心感心!」

「ったり前だろ!? だれの息子と思ってんだ!」

「それもそうだな!」


 そう言って頭から手を離すと、次の瞬間にドールは担がれていた。


「おい父ちゃん!」

「次の相手は歴代最高ともいわれる生徒会長なんじゃろ? 勝てる術はあるんか?」

「……」

「まぁ、わしの見立てじゃなにもさせてもらえずにコテンパンにされるのがオチだな」

「んなのやってみなきゃ分かんねーだろ!」

「いや、分かる。自分でも気づいておるじゃろ」

「……じゃあどうしろってんだ! 父ちゃんが勝ち方でも教えてくれるってのか!?」

「そうじゃな、勝ち方とまではいかんが、一つおもしろいもんを教えてやる」

「……それであいつに勝てるのか?」

「ガッハッハッ、そりゃお前次第に決まっとろうが!」


 ドールはそれを聞くと、口角を上げ、ガリアと同じように笑った。


「やってやろうじゃねぇか!」





◇ ◇ ◇





「とまぁ、こんな感じで半ば拉致みたいな感じで連れてかれた訳で……」

「あっははは、やっぱガイルさんはおもしろいなぁ。……それで、勝てるのかい?」

「まぁ見とけって!」


 それだけいうと視線をクリスとハイネに移した。




─────────────────────


 久々に投稿した訳ですが、主も大学生になってほぼ手をつけてない状態でした。笑


 これからもほんとに気が向いたりしたらあげようかなって思ってるので、思い出したときに更新されてるかチェックなりしてみてください(ほんと適当で申し訳ないです)。

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やっぱりチートは凄かった!!〜チートもらって、異世界行って、無双するのは、気持ちよすぎる〜 たく @sheiku

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