Mission12: セファイア当日

 翌朝。

 ゼルゲイドたちゲルゼリア乗組員が設営を完了させたお陰で、メイディアにおけるセファイアは滞りなく進んでいた。

 サロメルデ王国の各地で開催されるのがセファイアであり、開催地によって様々なイベントが大々的に行われる。


 だが、各地で自由に行われるセファイアにも絶対に共通して行う事柄があった。それは「午前9時からの、1分間の沈黙」である。


 昨年の思い出を振り返りつつも、気持ち新たに新年を祝すために設けられた沈黙だ。この沈黙を経るまでは、どんな人間であってもバカ騒ぎは起こさない。

 ゼルゲイドたちは一般参加者の集団にまぎれ、その時を今か今かと待ちわびていた。


「沈黙!」


 午前9時を迎えた。サロメルデ国王――あるいは開催地付近の権力者――が出した合図で、一瞬にして静寂が場を支配する。


 ゼルゲイドは父親の無念を晴らすこと、そしてアドレーネやゲルゼリアに関わる者全員を守ることを、心の中で誓う。

 一方のアドレーネは、自らが“希望”となりゲルゼリア王国を再興すること、そしてゼルゲイドに一生涯寄り添うことを誓っていた。


「やめ!」


 再びの合図によって、長く感じた一分間が終わる。ここからは、狂喜乱舞する時間だ。


 セファイアに参加している者は待ってましたとばかりに、飲みたいものを飲み食べたいものを食べ、騒ぎ出す。

 ゼルゲイドはあらかじめアドレーネから聞いていた欲しいものを回収しつつ、はぐれないようアドレーネの手を引いて喧騒の外に逃げ出す。

 プロメテウス隊の4人や設営を手伝った整備部隊などは、喧騒に巻き込まれつつも思い思いに楽しむ。

 パレント1ワンことアーロンは設営を頑張った労いを自分自身に施すべく、一人舞台裏で飲食する。

 パレント7セブンことルークは、ゲルゼリアから貸与されたUAVとモニター画面で、病室からセファイアの様子を見る。

 Mは一人再離陸したゲルゼリアにて、セファイアの様子を見ながらゆったりとワインを飲む。

 それぞれが、思い思いに楽しんでいた。




 ゼルゲイドたちが守り抜いたセファイアはサロメルデ王国の民の希望として、例年にはない盛り上がりを見せているのであった。

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Advancer~新年祭セファイア~ 有原ハリアー @BlackKnight

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