Mission11: 父への誓いと、少女への恋心

 その数分後、ゼルゲイドの部屋で。


「もうすぐ、一年が終わるな……。父さん、無実を示すのはまだ先になりそうだ」


 薄暗い部屋でゼルゲイドは、今は亡き父に向けてこの一年の結果を報告していた。


「けど、このゲルゼリアに乗ったのは正しい選択だと思ってる。だから父さん、見守っててくれ。父さんの遺してくれたシュヴァルリト・グランで、真実にたどり着いてみせる」


 吐息をまじえ、ゼルゲイドは報告を続ける。


「それに……俺には、守る人が出来たからな。おっぱいが大きくて可愛らしくて、しかも俺を慕ってくれる人だ。アドレーネって名前だよ。アドレーネ様って俺は呼んでる。もしかしたら、父さんも知ってるかもな。……ともかく、俺は誓ったことを守る。守ってみせる。だから……その時まで、待っていてくれ」


 それだけ言い終えると、ゼルゲイドはベッドに体を預ける。

 と、部屋の扉が開いた。


「誰だ?」

「アドレーネですわ。夜分に失礼いたします」


 普段着のドレスから一転、寝間着に着替えているアドレーネ。

 すぐ隣の部屋で、しかもゼルゲイドの部屋のロックを解除できる彼女は、こうして部屋に入ることができるのだ。


「お邪魔しますわね」


 何のためらいもなく、ゼルゲイドのベッドに潜り込む。


「ア、アドレーネ様……?」

「ゼルゲイド様。今年一年、ありがとうございました。私たちはまだ知り合ったばかりで、お互いのことをよく知りません。ですがゼルゲイド様は、随分私によくしてくれました。ゲルゼリア奪還のために、ずっと協力してくれておりました。お互いの目的は少し異なるかもしれませんが……これからも、よろしくお願いしますわね」

「はい、アドレーネ様」


 と、アドレーネはいたずらっぽく笑みを浮かべながら、ゼルゲイドの顔に自らの顔を近づける。


「それに……異性としても、よろしくお願いします。ゼルゲイド様」

「え……?」


 ゼルゲイドが呆けている間に、アドレーネはキスをした。

 軽く唇に触れる、ただそれだけのキスだ。


 だが異性との恋愛経験を持たないゼルゲイドにとっては、びっくりするものである。恋愛経験を持たないという点ではアドレーネも同じだが、ゼルゲイドへの愛情とキスへの好奇心で実行したのであった。


 キスを終えたアドレーネは、「うふふっ」とほほ笑んだ。


「それでは、来年……いいえ、今年一年も、よろしくお願いしますわね。ゼルゲイド様」

「は、はい……アドレーネ様」




 壁に埋め込んでいる時計は、0時を指していた。

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