半分、大人。
雨世界
1 大空は意外と遠い場所だった。
半分、大人。
登場人物
白浜真帆 中学生 十五歳
古谷風太 中学生 十五歳
プロローグ
私はあなたのことが好きになった。
本編
大空は意外と遠い場所だった。
一羽の小鳥が空の中を飛んでいる。
自由な小鳥。
そんな小鳥の姿を見て、私は、いいな。……羨ましいな、とそう思った。
白浜真帆が見る空はいつも明るかった。真帆にとって空とは明るい場所のことだった。だからこうしてどんよりと曇った曇り空を眺めることに、真帆はあまり慣れていなかったのだ。
「はあ〜、私、なにやってるんだろう?」
大きなため息をついて、自分の席でぼんやりしている真帆はそんなことをいった。
「なにしてるの? 真帆」
友達の秋津萌香が真帆に声をかけた。
「別にー」
真帆は言う。
「別にー、じゃないでしょ? 真帆。山谷先生に呼ばれてたんじゃなかったっけ?」
「え? あ、そうだった! ごめん、萌香。私、ちょっと行ってくる!!」
そう言うと真帆はすぐに自分の席から立ち上がって、急ぎ足で教室を出て行った。
「学校の外で待ってるからね、真帆! 一緒に帰ろう!」
真帆の背中に向かって萌香が言う。
「うん、わかった!」
そんな萌香に真帆は廊下から声だけでそう返事をした。
半分、大人。 雨世界 @amesekai
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