第11話 嫌いと憧れ
裸になった詩織さんは凄かった。
「……綺麗」
傷一つない真っ白な肌に、私は見惚れてしまっていた。
「そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいわよ……」
顔を赤らめながらバスタオルで体を隠す詩織さん。体のラインを隠しているつもりなのだろうが、豊満な胸がバスタオルを盛り上げ、より一層体のラインが際立った。
私の貧相な体と見比べてみるとその違いが明らかだった。
いや、そもそも私なんかと詩織さんを比べるのがおかしな話だった。
でも……叶うのならば……
「私も詩織さんみたいになれたらなぁ……」
「えっ?」
「あ……っ!!」
心の内で抑えておくつもりだった気持ちが、知らずのうちに口に出ていた。
私なんかがなれるはずないのに。そんなこと、できるはずないのに。何を夢みたいな事を言っているんだろうか、私は。
あぁ……。嫌いだ。こんな自分が嫌いだ。ちょっと優しくして貰えただけで調子に乗ってしまう自分が嫌いだ。自分に不相応の夢を抱いてしまう自分が嫌いだ。
嫌いだ。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い……。私は自分が大っ嫌いだ。何もかも、自分の何もかもが嫌いだ。
あぁ……左の手首が疼く。掻き毟りたい。嫌いな私に今すぐ罰を与えたい。
いつものように自己嫌悪に陥り始めていると、体にバスタオルを巻いたまま詩織さんが私の顔を覗き込んだ。
「私みたいになりたいの?」
「それは……その……」
さっきまでの悲しげなものとは違い、いつものように優しい表情の詩織さんからの問いに、私は何と答えていいか分からなかった。
「あなたなんかが私になんてなれるわけないでしょ!!」
そう言われた方が返答が楽だったかも知れない。
その通りなのだから。私なんかが詩織さんみたいになれるわけ無いのだから。
それなのに、どうして……
「自分の心に正直になってみて?しおりちゃんはどうなりたい?」
どうして詩織さんに質問されると……
「…………なり、たいです」
こうも気持ちが揺れ動いてしまうのだろうか。
私、夢見てもいいかな?身分不相応な夢を、見てもいいかな?
心の中にいるもう一人の私にそう問いかけながら、詩織さんに再度想いを伝える。
「詩織さんみたいに……なりたい、です!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます