第2話

 技術が進化した世界の戦争は、戦車を走らせたり、人間同士の戦いではなく、地球規模で戦うのが主流になっていた。


 そして、200年前_____この紫の国は、日本という国だったらしい。

紫の国、もとい日本と敵対していた国が、日本上空のオゾン層を破壊した。

地球温暖化が進んだ地球のオゾン層を壊す事など、そう難しくはなかったはずだ。

太陽の紫外線で、アスファルトは溶け、人間の皮膚は爛れ、通信器具は片っ端から壊れた。


こうして日本は、200年前に滅んだ。


その後も、世界各地で戦争が続き、日本を滅ぼした国にならって、他の国も、敵対している国のオゾン層を破壊し、破壊された国は仕返しをした。

そんな終わりのない戦争が、約3年続いた。

 

そして、たった3年で地球にオゾン層がなくなり、地球から人間がいなくなった。


 しかし、ここで疑問に思う事があるだろう。

今、紫の国に住んでいる僕たちは、何者なのか。

安心して欲しい、僕たちは人間だ。

僕たちの祖先は、オゾン層破壊を視野に入れて戦争していた。

祖先は、国の上空に大きな円盤_____GLTTW、通称、ギットを造って、それを浮かせた。

太陽の光を犠牲に、国民を紫外線から守ったのだ。

しかし、この機械も万能ではない。

吸収した紫外線を排出する為、副作用として一日に一回、紫の雨が降る。

その雨にうたれると、皮膚が紫になり、壊死してしまう。


その雨を、良くないと思っている人も少なくはない。

今の技術を駆使すれば、もっといい物が造れるからだ。

その為、国は部隊を作った。

もちろん、ギットを壊す為の部隊だ。


僕は、その部隊に所属している。

 

「行ってきます」

「傘忘れないでよ〜」


母親に念を押され、傘を手に、僕は家を出た。


 ここから僕の部隊がある施設までは、そう遠くない。

この紫の国自体、それほど大きな国じゃない。

昔はもっと大陸があったり、海を挟んで島もあったらしいが、今は大陸一つだけだ。


「おぉ〜、その気弱そうな背中!やっぱりそうだ!おはよう、からかさ!」


 突然背中を叩かれ、ムッとしながら振り向くと、ヘラヘラした髙水がいた。


「髙水か…毎回、背中叩くのやめてくれないか」

「猫背なのがいけねぇんだよ、もっとこうシャキッとしろ!シャキッと!」

「はぁ…」


このやけにハイテンションは男は、僕の同僚であり、友達の髙水。


「今日は久しぶりの突撃だな!」

「だからそんなテンション高いのか」


僕たちの部隊は、月に一回、ギットを破壊する為に空を飛ぶ。

髙水は、それが大好きなのだ。


「俺がギットを破壊したら…テレビで超話題になるよな!」

「だな。働かなくても、一生暮らしていけるだろうな」

「だよな!」


髙水と、夢見がちな話をしていると、僕たちの職場に着いた。




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紫雨が降り注ぐ前に 加藤 まいこ @tihiroaino

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