紫雨が降り注ぐ前に

加藤 まいこ

第1話 プロローグ

 2XXX年、地球。

フライパンを叩く音で、僕はイライラしながら目を覚ました。


「朝ですよ〜、さっさと起きろ」

「っ…もっと、マシな起こし方しろよな…」


僕は、寝癖のついた髪を触る。


「アンタが、目覚ましで起きないのがいけないんじゃない」

「これをチョイスした、お前のセンスを疑うわ…」


僕は枕元にある、相手を威嚇をしているライオンの目覚まし時計を見つめる。

しばらく見つめていたせいか、目覚まし時計が「アー」と、その顔からは想像出来ない程、間抜けな鳴き声を上げた。

本当に…何でこれを選んだんだか。


「ほら、さっさとご飯食べて!髙水たかみくん待たせちゃうぞ」

「分かってるって」


 僕は幼馴染兼居候の、雨下あめしたの後を追うように、下へ降りた。


僕の実家は、喫茶店を営んでいる。父親は事故で亡くなり、今は母親と雨下の三人暮らしだ。

雨下は、さっきも言った通り、幼馴染で、家出をして、今ここにいる。


「おはよう。ふふっ、また雨下ちゃんに起こされたの?」


 下に降りると、コーヒー豆を引く母親に笑われる。


「はい、トースト」

「どうも」


僕はこんがり焼けたトーストを齧りながら、テレビに目をやる。

テレビはちょうど、天気予報が流れていた。


「今日は、午後に降るみたいね」

「ここ最近、雨の濃度が高いみたいですね。お母さん、買い物なら私が行きます」

「あら、そう?じゃあ、お願いしようかしら」


この地域では、一日に一回、何とも珍しい雨が降る。

それは、この紫の国の由来にもなっている。


紫の国が出来たのは、今から200年前。

何度目かの戦争時代に遡る_____

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