第8話 一緒に
いつも通りの夕空、公園を照らす夕焼けは俺達二人の影を映し出していた。
高校生にはやはり低いブランコに俺は座っている。
今日はまだ咲夜が来ていない。俺のところが早かったのか、それとも何か咲夜に用事があって来れないのか。スマホで連絡を取って確かめることもできずにいる。
今日もやることがいっぱいある。リストアップした四人を探して殺さないといけない。理由はその四人が本当に家にいるのかわからない点があるからだ。
もう、いつもいる時間より、大幅に過ぎている……。今日はきっと用事で来れないのだと判断して俺はブランコから立ち上がり、帰ろうと鞄を持った。
「零さん、帰らないで」
そんな声と共に鞄を持っていない方の腕の裾を引かれ、振り返ると咲夜がすぐ側にいた。だけど、見た目は明らかにボロボロだった。
「咲夜…?お前……」
「お願い……帰らないで、零さん。少し、少しの間だけでいいから……」
そう懇願する咲夜の手は酷く震えていた。俺はそんな咲夜の手を取って、咲夜をブランコに座らせ、俺はその咲夜の前にしゃがんだ。
しゃがんで咲夜の顔を見てみると、目は充血していて、さっきまで泣いていたのか、目元が腫れている。
「何か、あったのか?」
なるべく優しい声で問いかけると、咲夜は俯いてしまった。最初は話すことに抵抗があったらしく、だんまりしてしまった。しかし、何度も優しく問いかけると、少しずつ何があったのか話してくれた。
どうやら、今までは何もしてこなかった奴らが急に暴力を振るってきたらしい。
「僕の特殊能力は皆と合ってないから……怖がられて…嫌われて………っ」
ポロポロと涙を流し、嗚咽しながら話す咲夜を俺は静かに抱きしめた。安心させるように背中を叩く。
咲夜にわからないよう、俺はガリッと奥歯を噛み締めた。
咲夜には特殊能力がある……。でも、黒騎士の教団内では見たことがない。つまりは、白騎士の教団である可能性が高いということがわかる。
恐らく、咲夜の特殊能力は黒騎士の教団寄りなのだろう。だからこそ、白騎士の教団からは紛い物として扱われているのだ。
「咲夜。そんなに辛いのならもう帰らなくていい。学校にも行かなくていい。俺と一緒に住もう。好きなだけ一緒にいよう」
咲夜の頭を撫でながら俺はそう提案する。
やはり白騎士の教団は生きていてはいけない。早くに殺さないといけない。あいつらは殺す価値がある。恨みの果てに殺されるのだ、ざまあみろとも嘲笑できる。結局、自業自得ということだ。
「零さんの……家?」
「そう、俺の家なら咲夜を傷つける奴らはいない。もしお前がまた傷つけられそうなら、俺はそいつを容赦なく地獄に突き落としてやる」
俺は咲夜の顔を見るべく、少しだけ離れ、咲夜の頬に手を添える。
「俺はお前が望むなら天使にでも悪魔にでもなろう。愛してる、咲夜」
そう言って咲夜にキスをする。咲夜は突然のことで目を見開いてを俺を見てくる。それに対して俺は今までしてこなかった優しい笑顔を咲夜へと向けて笑った。
____「“俺だけがお前を幸せにできる”」____
少年を愛してしまった殺人鬼 黒木雫 @tuisute
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