最終章「真実」
「くははは! 掛かったな愚か者! この『転生者
勝ち誇ったようにまくしたてていた魔王は、しかし途中で急に口ごもり、真顔になって僕の目をまっすぐ見返してきた。
「だから『努力』だよ。学習し、予習復習し、実践し鍛錬し、それをひたすら積み重ねることでどんな奥義もいつかは自分のものにできるという、最強の『能力』だ」
場を支配するのは沈黙。あいかわらず、僕の体にはなんの違和感もない。なんならもう一度城門からここまでやり直してもいいぐらいだ。
「僕はこの世界で物心ついてから何十年、寝る間も惜しんでこの『
魔王はただ呆然としている。魔眼もすっかり弱火だ。おそらく、僕の『能力』のあまりのすさまじさに、完全に心が折れたのだろう。
「……そうか……呪いなど効くはずもない……貴様はそもそも
「おい女狐とか言うな、あのお姉さんに失礼だろ! どちらかと言えばタヌキ顔だったし!」
阿呆呼ばわりされたことより、お姉さんを不当に
――ところで。そもそも魔族は物体よりも精神寄りの生命体である(このへんも皇立図書館に籠って勉強した)からして、心が折れた状態ではきわめて脆弱な存在になるのだという。
その一刺しがクリティカルヒットしたのだろう。魔王の巨体は、さらさらと砂のように崩れ落ちた。
(おわり)
異世界転生した僕が魔王を倒すまでの、よくある物語。 クサバノカゲ @kusaba
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