決断
松長良樹
決断
――あるとき銀河系遥かな遠い宇宙で、ある惑星の軌道が外れた。
まったく宇宙の摂理にも
今となってはその原因を究明したところで正確な答えは出てこないだろうから、回りくどい説明は省略してともかく話を先に進めよう。
惑星は実に地球によく似ていて、偶然にも人間に似た高等生物が住んでいた。なんの因果か星は永い間宇宙をさ迷うはめになり、不定期になった昼と夜とを何度も過ごして、とうとう地球の見える宇宙にまでやってきてしまった。
その運行コース上に運悪く地球が位置していた。地球人はあわてた。もちろんその星の住民もパニック状態に追い込まれた。
厳密な軌道計算の結果、あと数週間でその星は地球に衝突するという事が判明した。
刻一刻、大きく見えてくるその星を見上げ人々は絶望した。
変な宗教団体が大騒ぎをし、お坊さんはひたすらにお経をあげ続け、ツチノコがひょっこり顔を出し、河童が踊りだした。世界が終わりを告げようとしていた。
しかし地球の天文学者をはじめとした優秀な科学チームはついに地球を救う方法を考え出した。
それは二つの方法に集約されていた。
核兵器の一万倍もの威力を持つミサイルでその星を破壊してしまうか、南極に巨大なロケットを建設して地球の軌道をずらして星を交わすか――。
のどちらかだった。
世界の首脳が集まって緊急会議が開かれた。一刻の猶予もできない。
そして生命尊重の立場からその星にも生命がいるのだから、破壊はできないとして、地球の軌道を変えるという方法が取られた。
世界の技術者が総動員され不眠不休の末、そのロケットエンジンは完成した。
そして見事に地球と星の窮地を救ったのある。
その星の住民はもの凄く人間のしたことに感謝をし、このご恩は生涯忘れませんというメッセージを残し、宇宙のかなたに消えていった。
だが、アクシデントが起こった。
いったん軌道を外れてしまった地球は元の軌道に戻れなくなってしまったのだ。もはやロケットエンジンさえ役には立たなかった。
そして地球も不定期になった昼と夜とを何度も過ごした。悲しいことに地球は宇宙を彷徨い始めてしまった。
宇宙の孤児となった地球、それでも人間は希望を捨てなかった。
すると前方に大きな惑星が見えてきた。不思議なものでその星にもまた、人間に似た生物が住んでいたのだ。悪い予感がした。そしてその予感は当たった。
その惑星と衝突するのも時間の問題であった。地球人はその惑星と何度も交信を試みたがなぜか応答がなかった。
通じなかったのではない、彼らは苦渋の決断を迫られていたのだ。
優秀な科学力の結晶、光子望遠鏡で地球の過去を垣間見てしまった彼らは、地球と同じ運命を恐れたのである。
彼らは心を鬼にして惑星破壊用ミサイルの照準を地球に合わせた……。
了
決断 松長良樹 @yoshiki2020
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