第6話   舞踏会2 〜王子達との出会い〜

 私達のダンスが終わると、皆がホールに集まって踊り出す。色鮮やかなドレスの花がホールに集まると、王子と私はそれぞれ違う相手とダンスを踊る。

 王子は色とりどりのドレスに囲まれて、あっという間に見えなくなってしまった。

 私はというと、他国から留学で来ている王子達に囲まれていた。皆、それぞれ民族衣装や軍服、礼服、王子だけあって、煌びやかで、しかも、皆様、カッコイイというよりも美しい顔をしている。

「レオン王子の周りは華やかですが、僕は清楚で品のある貴方の、ような花と舞いたい」

 そう、最初に声をかけてきたのは、インデーゴ国の皇太子であるトリス・カール・カイサル王子。

 青い胸に勲章のついた軍服に肩から銀色のサッシュを掛けている。

 艶やかな銀色の髪に、パープルアイ。ため息がでるほど美しいが、彼が喋ると何故か残念な感じがする。

「トリス、お前は1人で花と舞って来い、

令嬢とは、オレが踊る」

 そう、横から言ってきたのは、紅い軍服にゴールドのサッシュ、沢山の勲章を胸につけている、体格の一際大きい、エイレン国の王太子であるアラン・ティーダ・サン王子。紅い髪にルビーのような赤い瞳。体育会系の身体でキリッとした美しい顔立ちをしている。

「そういうアラン王子は、可憐な花と舞うよりも、剣と舞っていた方がお似合いですよ」

 ハスキーボイスが後ろからして、ドキッとして振り向けば、白いレースを何重にも重ねたようなフワッとした生地にゴールドの刺繍がふんだんに使われ、肩から斜めがけにゴールドの生地のマントが縫い付けられていて、ゴールドの腰巻を細い腰に色っぽく巻き付けている砂漠の民の民族衣装を見に纏った、デーダ王国の皇太子スコーピオン・ガイル・ラー王子がいた。

 褐色の肌に映える銀色の髪。金色の瞳。

芸術作品のように整った顔。

 思わず、私は逃げ出したくなった。

 その時、3人組の御令嬢達が遠慮がちにトリス王子に声をかけてきた。

「あのっ! トリス王子様、今、よろしいかしら? 私、王子の著書『ナンセンスだよ!』を拝読しました!ぜひ、サインを、頂きたいのです!」

 そして、その3人組は本を差し出す。そのタイトル『ナンセンスだよ!』と書いてある。

 私は思わず吹き出しそうになった。なんなのそのタイトル!しかも、人気あるの?

「あの自画自賛の本が、なぜ売れるのか! 本当に理解しがたい」

そう言って、眼鏡を押し上げたのは、ポードル国皇太子、ルル・アレル・ネロ王子。深い海のような紺色のサラサラの髪に彼女達を冷ややかに見つめる淡いブルーの瞳。紺色の軍服をカチッと着て銀色のサッシュをしている。何だか隙がないというか、神経質な感じが伺える。

「内容知ってるって事は読んでくれたんだね! ありがとう、ルルちゃん!」

 そう言って、トリス王子はウインクした。ルル王子はものすごく嫌そうな顔を隠そうともしない。

「ちゃんづけは、やめろと言っただろう。……まったく、君のポジティプさは尊敬するよ」

 そう王子たちが、やんやと話が盛り上がってきたので、私は「少し、失礼しますわ」と言って、王子達からスーと離れて、バルコニーに出た。

 広いバルコニーの手摺に手を置いて、はーと息をついた。

 森の向こうの星は澄んでてとても綺麗で、夜空に見惚れていたわたしは、近くに怪しい影が近づいてきていた事に気がつかなかった。



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪役令嬢と恋と聖剣 @lovemomo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ